• HOME
  • HOME
  • INTERVIEW
  • 丘みどり、オペラをモチーフにした歌謡曲「椿姫咲いた」に込めた思い MV制作秘話も語る

丘みどり、オペラをモチーフにした歌謡曲「椿姫咲いた」に込めた思い MV制作秘話も語る

 オペラ『椿姫』を題材に、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の劇伴などを手がけた金子隆博が作曲、坂本冬美の「夜桜お七」などを手がけた作詞家/歌人・林あまりを迎えて制作。洋と和が絶妙に融合したオペラをモチーフにした歌謡曲「椿姫咲いた」は、丘みどりが花魁に扮したきらびやかなジャケット写真やMVが話題だ。楽曲に込めた思いやレコーディングのエピソード、さらに日々研究しているカレー作りなど。丘みどりの今に迫った。(榑林史章)

■歌詞カードをじっくり読んで想像を広げてほしい

ーー新曲「椿姫咲いた」ですが、ジャケットやMVなどのビジュアルが花魁なので、江戸時代や明治の日本が舞台なのかと思ったのですが、歌詞を読み進めると〈ヒール鳴らして〉という一節もあって、現代の歌であることに気づいて驚きました。

丘みどり(以下、丘):もともと『椿姫』の主人公であるヴィオレッタが高級娼婦なので、それを日本に置き換えると花魁になるのかなと思って、ジャケット写真やMVは私が花魁に扮して撮影しました。ですが、歌詞はあくまでも女性の強さを歌っていて、それは江戸時代だろうと現代だろうと変わらないものなのではないかと思います。

ーー現代女性への応援歌的な側面もあったりするのでしょうか。

丘:どうですかね(笑)。冒頭からいきなり〈死にたいなんて 思ってた〉と、インパクトのあるワードが出てきますし。歌詞をいただいた時に自分でも驚いたのですが、あくまでも物語と世界観を楽しんでいただければと思います。

ーー〈死にたいなんて 思ってた〉も、歌い方一つで受け止め方が変わりますね。

丘:はい。ここはインパクトがありますが、あくまでも過去を振り返っているだけなので。伝えたい思いがあって最初にこの言葉があるのですが、〈死にたい〉という言葉があまり強くなりすぎないように気をつけました。

ーーまた、〈真っ赤な椿ぽろりん、ぽろりん〉というフレーズもあり、〈ぽろりん〉という言葉が可愛いなと思ったのですが……。

丘:椿の花は枯れる時、花が首からポロッと取れて落ちるんですよね。そういうところから解釈を広げても、面白いなと思います。

ーーたくさんの伏線が入り乱れていて、考察しがいのある歌詞ですね。

丘:ありがとうございます。作詞家の林あまり先生とも話したのですが、あくまでも聴いてくださった皆さんの想像や解釈を大切にしたいと思っています。なので私から「これはこういう意味で」と話してしまうとそれが答えになってしまうので、あえて解説はしません。その代わり歌詞カードをじっくり読んで、想像を広げて楽しんでほしいです。

ーー作曲の金子隆博さんとは、レコーディングの休憩中などでどんな話をされたのですか?

丘:金子さんが海外旅行がしたいということで、私が13年くらい前にケニアに行ったことがあるというお話をしたら、「何でケニアに行こうと思ったの?」と、興味を持ってくださって(笑)。

ーー何でケニアに行こうと思ったんですか?

丘:マサイ族に会いたくて。番組でもなく、完全にプライベートです(笑)。実際にマサイ族の方にも会えて、とても楽しい旅行でした。マサイ族って、ジャンプしていかに高く跳べるかが“イケメン”かどうかの基準になるんですね。だから一番高く跳べる人が、一番格好いいんです。私が行った時も、みんなでジャンプしていました。

ーー言葉はどうされたのですか? ケニアも英語だったり?

丘:私は日本語以外、全く話せません(笑)。だから海外では、ボディランゲージと気持ちです!

ーーちょっと話がそれますが、他に印象に残っている海外はどこですか?

丘:ラスベガスですね。セリーヌ・ディオンさんのショーを観に行ったんです。カジノにも行ったのですが、ビギナーズラックで! ルールも全然分からなかったのですが、ルーレットで数字の上にチップをポンって置いたら当たってしまって。ディーラーの方から、「明日はルイ・ヴィトンのバッグが買えるね!」って。

ーーそんなに勝ったんですか!

丘:ディーラーさんから「もう一回やる?」って聞かれたんですけど、あまりの大金に怖くなっちゃって「もう大丈夫です」って言ったら、その場にいた人たちがみんな「やらんのか~い!」ってずっこけてました(笑)。でも、しっかりバッグを買って帰りましたよ!

■花魁には所作のルールがある

ーー話を「椿姫咲いた」に戻しますが、オケもバンドサウンドを中心にしながら様々な楽器が入っていたり壮大です。ポップスの要素が多分に含まれていますが、決してポップスに偏らず、演歌ならではの部分もしっかり踏襲しています。

丘:従来の演歌にはなかったダイナミックさがありますね。このメロディをいただいた時、最初はドレスを着て歌うという案もあったのですが、私としては演歌歌手・丘みどりとして今年の1年間をやっていきたいという思いがありましたので、斬新なメロディではあるけど、あえて着物を着て歌うことを選びました。ジャンルは何なのか分からないのですが、私は音楽にジャンルはないと思っているので、格好いい曲を格好よく届けられたらいいなと思うだけです。

ーードレスではなく着物だ、と。MVはすごく豪華絢爛な世界観で、丘さんは花魁の着物を着て登場します。実際に着てみていかがでしたか?

丘:すごく重くて大変でした。ちなみにあの花魁の衣装は、レディー・ガガさんが来日された際に、「花魁の衣装を着たい」と言って袖を通されたものなのだそうで、レディー・ガガさんの次に丘みどりがそれを着ることができて光栄だなと思いました。

ーー普通の着物とは、着付けも違うのですか?

丘:全く違うんですよ。花魁のお衣装を着せる専門の方がいらして、撮影の時はお2人来てくださったのですが、それでも着付けるのに1時間以上かかりました。一度着たら終わるまで脱げないので、朝イチで着てから1日大変でした。お昼のお弁当を食べる時も、汚さないようにたくさん布を巻いて衣装を保護しながら食べるという感じで。そういう部分でも、とてもハードな撮影でしたね。

ーー衣装もそうですけど、髪の毛も重たそうですね。

丘:すごく重いんです。その上で、26センチの高さの高下駄を履いて歩くシーンもあって、下駄を引きずるように歩く独特の歩き方も初めてだったので、転ばないか心配でとても怖かったです。振り返るといろいろ大変だったのですが、当日は身が引き締まる思いがしましたし、この衣装のおかげで歌の世界に入り込んで撮ることができました。

ーーキセルをふかすシーンも格好良かったです。

丘:ありがとうございます。キセルの持ち方などには細かい所作があって、それも花魁の衣装を着せてくださった方にご指導いただきました。花魁にはルールがたくさんあって、立っている時に手を見せたらダメで、体の前で帯が膨らんでいるところに隠さないといけないらしくて。「手の内を隠す」みたいな意味があるそうです。また、花魁とは違う白い着物で歌うシーンもありますが、あれは花魁の着飾った姿とは違う、普段の素顔のようなイメージで撮りました。

ーーシルエットで踊る姿がありましたが、あれも丘さんですか?

丘:そうです。あのシーンは、監督さんから「適当に動いてください」と言われて撮ったものなのですが、急に扇子を渡されて「え!」って驚きました。本当に、適当にやっただけなのですが、染みついているものがあったので、普段から先生に教わっていることが、こういうところで役立ったなと思いました。

ーー丘さん的に、あまり見えていないけど大変だったとか、こだわったというところはありますか?

丘:桜の木の下で歌っているシーンで、先ほども触れた26センチの高下駄を履いて立っているんですね。衣装も頭も重いからバランスが難しくて、上を向くだけで後ろに倒れそうになってしまって。すぐ支えられるように、近くでスタッフの方が待機してくださっていたのですが、あのシーンは、実はすごく怖かったですし苦労しました。ただ、足下が全く映ってなくて、後で「危ない思いをしてまで高下駄を履く必要はなかったんじゃないか?」と思いましたけど(笑)。履いていたからこそ見せることができた表情もあったと思いますし、身も心も物語の主人公になり切るためには、きっと必要だったんじゃないかと思います。結果オーライです。

ーーこの楽曲は1曲の中で展開が多く、カラオケで歌うのが大変そうだなと思いました。

丘:曲を聴かれた方からは、「大変そう」ってよく言われます。実際に歌っても大変なんですけど(笑)。でも、練習して歌えるようになると、サビはすごく気持ちいいですよ。ぜひ皆さんもたくさん練習して、カラオケでぜひ歌ってほしいです。

ーー丘さんから「ここはこんな風に歌うといいよ」というポイントはありますか?

丘:前半は自分の中に語りかけるように抑えて歌っていただいて、後半の〈ぽろりん〉のとこで、2回目の〈ぽろりん〉に吐息を混ぜていただくと、少しセクシーに聴こえるんじゃないかと思います。ぜひ2回目の〈ぽろりん〉に皆さんなりの表情をつけて、こだわって歌っていただけたらいいなと思います。

■歌の世界で恋愛を疑似体験する

ーーそしてもう1曲の「さだめ燃ゆ」は、〈愛して 愛して 愛しても 愛し足りぬと あぁ さだめ燃ゆ〉と非常に情熱的な楽曲です。

丘:はい。そんな恋愛もできたらいいな、と。

ーー丘さんは、すでに幸せな家庭生活を送っていらっしゃるのでは……!?

丘:そんな私が言うのもなんですけどね(笑)。ただ聴いてくださる皆さんもそうだと思いますけど、そういう身を焦がすような恋愛を実生活でしないだけに、せめてこういう歌の世界で体験できたらいいなと。それはいつも、どの曲を歌う時でも思うことですね。

ーー少女漫画を読んで、「こんな恋愛がしたい」とか「こういう人と知り合いたい」と夢を膨らませるような感覚に近いのでしょうね。

丘:まさしくそうだと思います。私自身、曲を歌う時は歌詞の主人公になり切ることを心がけているので、歌の世界で恋愛を疑似体験し、こういう愛を体感させてもらえているなと感じます。

ーー〈愛して 愛して 愛しても 愛し足りぬと〉の一節のように、丘さんがこれだけやってもまだやり足りないと思うことは何かありますか?

丘:私は、お料理ですね。ゴールがないので、いつももっともっと、と思います。もっと美味しく作れるのではないかと、日々研究しているということです。

ーー同じ料理を作るのでも、毎回少しずつ何かを変えるんですか?

丘:はい。いつも目分量なので、その時によって違いますし、「この調味料を入れてみようか?」とひらめいたり。調味料をセットで買うと、何の料理に使うのか分からないものがいくつかあるなじゃないですか。そういう香辛料を入れてみたりだとか。

ーーそれで失敗はないのですか?

丘:失敗は……ありません。最後には、強引にでも何とかまとめる力があるみたいで(笑)。

ーーよく作るメニューは?

丘:基本は和食ですけど、コロナ禍で時間があった時は、スパイスをたくさん買い込んでカレー作りにハマりました。カレーこそゴールがありません。

ーーそのうちコンサート会場で、カレーを売り始めていそうですね(笑)。

丘:もう考えていますよ。「丘みどりのグリーンカレー」(笑)。

ーー(笑)。では最後になりますが、春一番も吹いて、春の兆しが感じられるようになりました。春は出会いと別れの季節でもありますが、丘さんの中で思い出に残っている春のエピソードを教えてください。

丘:とある女性ファンの方の話なのですが、その方のお父さんは事故に遭ってから全く外に出かけなくなってしまって、「温かくなったから外に出よう」とか、どんなに誘っても外に出たがらなかったそうなんです。そこである時、娘さんが無理矢理私のコンサートに連れて来てくださって。それをきっかけに、外に出てくれるようになったそうなんです。その後、4年くらい前に親子で握手会に来てくださって、「あの時はお父さんを助けてもらってありがとうございました」と、泣きながらお話してくださいました。そういう出会いが、春にありました。きっと私が知らないだけで、ファンの皆さんの中にはそれぞれドラマがあると思うので、握手会などの際に教えてもらえたらうれしいです。

取材・文=榑林史章/写真=はぎひさこ

■リリース情報
『椿姫咲いた』
発売:2023年2月22日(水)
【CD+DVD】
価格:¥1,700(税込)
(CD)
1.椿姫咲いた
作詩:林あまり 作曲:金子隆博 編曲:杉山ユカリ
2.さだめ燃ゆ
作詩:森坂とも 作曲:向井浩二 編曲:伊戸のりお
(DVD)新曲ミュージックビデオ・メイキング映像

【通常盤】
定価:¥1,400(税込)

CDはこちら
https://www.kingrecords.co.jp/cs/artist/artist.aspx?artist=45018
配信はこちら
https://king-records.lnk.to/TsubakihimeSaita

オフィシャルサイト
https://www.okamidori.com/

関連記事一覧