「Anileap」が繋ぐ“アニソンとの出会いと再会の場所” クリエイター陣が語り合うプロジェクトの経緯と展望
アニメ・声優を中心として音楽・映像の制作を行うキングレコードのレーベル・KING AMUSEMENT CREATIVE (以下、KAC)が、YouTubeでアニソンを全世界に24時間365日配信するライブストリームプロジェクト「Anileap(アニリープ)」を3月20日に正式ローンチした。「Anileap」には、アニソンを全世界・全世代の人々が気軽に楽しめるコミュニティをつくりたいという思いが込められており、アニソンの歴史を彩ってきた楽曲から最新楽曲までタイム・ボーダレスに楽しむことができる。4月24日には、TVアニメ「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」の主題歌および挿入歌全12曲など新たなアニソンが追加され、ますます充実を見せている。
その「Anileap」のプロジェクトに際して、クリエイティブ陣であるキングレコードの松井健晃氏、NOSTALOOK、青木陽平氏(we+)に「Anileap」がローンチするまでのクリエイティブの経緯、プロジェクトの今後の展望について聞いた。
――「Anileap」は、アニメの歴史を彩ってきたさまざなアニソンを、YouTubeにて24時間365日配信し続けている、レーベル公式のアニソンライブストリームプロジェクト。どのようなコンセプトのもとに始動したサービスなのでしょうか。
松井健晃(以下、松井):簡単に申し上げると、「全世界・全世代の人にアニソンにカジュアルに触れていただく」ことがコンセプトとなっています。僕自身はKACという、アニメ作品に関わる映像や音楽を制作するレーベルに所属しているのですが、1981年のスターチャイルド設立から数えても40年以上アニソンの歴史とともに歩んでいるキングレコードとして、改めてアニソンを全世界に発信したいという思いがあり、この企画を立ち上げました。
――松井さんは、「Anileap」と同じく『「KING AMUSEMENT CREATIVE」公式YouTubeチャンネル』で展開されているリリックビデオプロジェクト「&LYRICTED(アンリリテッド)」の企画プロデュース・ロゴデザインも担当されていますよね。
松井:はい。「&LYRICTED」は、KACやSONIC BLADEといった弊社レーベルに所属するアーティストの楽曲と、楽曲をテーマにクリエイターが描き下ろしたキャラクターの映像を組み合わせて、リリックビデオとして歌詞をしっかりと見せることで楽曲を再発信することをコンセプトに展開しています。また、弊社レーベル所属の声優アーティスト・岡咲美保がMCを務め、弊社レーベル所属のアーティスト同士がコミュニケーションを取る番組『岡咲美保サツアイ番組「おみほと!!」』の企画プロデュース・ロゴデザインも担当していました。
――やはりYouTubeおよび動画コンテンツに大きな可能性を見出されているのでしょうか。
松井:そうですね。我々としても、自分たちが取り扱っているコンテンツや文化に、もっと気軽に触れてほしいですし、だからこそ世界的に浸透している動画プラットフォームのひとつであるYouTubeをまずは用いて、日本を代表する文化の一つであるアニソンをキングレコードとしてもう一度世の中に発信していくことは、社会的にも時流的にも意義のあることだと感じています。
――「Anileap」では、アニソンだけでなく、オリジナルキャラクターの「LEAPちゃん」が登場するループアニメーションが24時間ライブ配信されているのも特色です。
松井:「Anileap」を立ち上げたきっかけの一つに、いわゆる24/7ライブストリームと呼ばれる文化がありまして、中でも2016~2017年頃から海外で流行り始めたローファイヒップホップのチャンネルでは、音楽とループアニメーションのセットが一つの型になっているんです。それらのアニメーションは、キャラクターが読書や執筆などの作業をしながら音楽を聴いているものが多いのですが、そういったユーザーと一緒に音楽を体験していることを演出する文脈にのっとりつつ、アニソンを取り扱うのであればアニメーションとの親和性も高いと思い、NOSTALOOKさんにご相談しまして、レトロフューチャーな世界観で星間旅行を行うアニソン好きの女の子・LEAPちゃんが生まれました。
――そういった設定について、どのような議論を交わして方向性を詰めていったのでしょうか。
松井:まず「Anileap」では、これまでのアニソンだけでなく、今後生まれる未来のアニソンも取り扱うだろうと考えたときに、過去も未来も感じられるアニメ―ションが理想的だと思いました。そこで70年代から90年代の作風を現代的に再構築したアニメアート制作されているNOSTALOOKさんに、ご相談をさせていただきました。
NOSTALOOK:私たちはその当時、自主制作のアニメをネット上に公開していただけだったので、お仕事のお話をいただいて率直に嬉しかったのですが、私たちの作風で破綻なく未来を描くことが難しくて……正直かなり悩みました(笑)。今回のテーマはレトロフューチャーが合うのかなと思ったのですが、最初にお話をいただいたときは、普段仕事をしている人が自宅に帰ってきてアニソンを聴きながらホッと一息つくようなイメージだったので、舞台は「未来の東京」にして、OLの女の子が自分の部屋でゆっくりしているという設定だったんです。ただ、24時間配信されるのに部屋の窓から見える景色に変化がないとおもしろくないですし、その他にもいろいろなことを考えた結果、LEAPちゃんの部屋は宇宙船内の仮想空間という設定に落ち着きました。
――あれは仮想空間だったんですね。
NOSTALOOK:あの部屋は本当はベッドしかない箱状の空間で、LEAPちゃんがバイザーのボタンを押すことで、いろんな部屋に変化するという設定なんです。彼女は長い時間をかけて星間旅行をしている最中なので、退屈しないように自分が好きな部屋を宇宙船内で再現していて、そこでアニソンを聴いているという設定にすれば、すべてのつじつまが合うんじゃないかと考えました。ちなみにLEAPちゃんの隣にいるCABBAGE(キャベツ)というペットみたいな存在は、彼女がOLという設定だったときの名残です。
――というのは?
NOSTALOOK:LEAPちゃんが普段どんな仕事をしているか考えたときに、たとえばひよこ鑑定士のように宇宙生物の雌雄を鑑定する仕事をしているんじゃないか、という話になったんです(笑)。そのときに考えたのがウニみたいな姿の宇宙生物で、ウニはキャベツを食べるという話を聞いたことからCABBAGEという名前にしたら、その設定が残ってそのままLEAPちゃんのペットみたいな存在になりました。
松井:その話は今初めて知りました(笑)。LEAPちゃんのデザインに関しても、僕のいろいろな注文や相談をしっかり形にしてくださって、本当にありがたかったです。配色もいろいろなパターンをご提案いただいたのですが、その時点でロゴデザインが完成していたので、実はロゴに使っている青や黄色を髪色や服のパーツにあしらってもらいました。
――ロゴのデザインは、we+(ウィープラス)の青木陽平さんが担当されています。
松井:僕は大学時代に生物学を専攻していたのですが、そこで非専門家に科学をわかりやすく伝えるサイエンスコミュニケーションという考え方に触れてコミュニケーションデザインに興味を持ちまして、大学の教授の紹介でデザインスタジオのwe+でインターン生として働いていたんです。青木さんにはその頃からお世話になっていて、今回、「Anileap」のコンセプトを形にするうえでご相談させていただきました。
青木:お話をいただいたときに、最初はパッと思いついたものを形にしてみようと思ったのですが、「Anileap」はいろいろなアニソンが流れるプラットフォームであるということを踏まえると、あまり特定の印象に偏りすぎないほうがいいと思いまして、「そもそもアニソンとはどういうものか?」というディスカッションを松井さんと重ねたうえで、いくつかのラフ案を出して方向性を定めていきました。
松井:最初は昔ながらのアニメカルチャーらしいロゴデザインの方向性も考えていたのですが、青木さんとお話をする中で、「Anileap」上でユーザーにどういった体験をしてほしいのかを考えて、「音に包まれる」ですとか「音が流れることによって気持ちに変化が起きる」といった音に焦点を当てるアイデアが生まれました。それと「アニソンは他の音楽に比べて記憶との紐づきが強いのではないか?」という話になりまして。例えば、アニソンを耳にすると、そのアニメを観ていた当時のことを思い出すことがあると思うんです。その意味で「アニソンは心を映す/寄り添ってくれる」といったキーワードも出てきました。
青木:下図のデザインはまさにそれを反映したもので、デザインを反転させることで「心に寄り添う・反映する」印象を与えられるのではないかと考えました。あとは「未来感」というキーワードが出たあたりからテイストが変わって、さらに「YouTubeで再生される」ことからシークバーの要素も加えるようになりました。特に左側の真ん中のデザインは、文字が「感情の起伏」、シークバーの要素はその「感情の起伏」に合わせて楽曲が再生されていくことを表していて、今改めて見ても最終案に活きていると思います。
松井:再生バーが進行することで色づいていく、といったアイデアもありましたよね。最終的にA~D案の4案に絞っていただいた中から、宇宙船やその航路図にも見えるB案を選んだのですが、このアルファベットの文字の一つひとつがアニソンの感情の起伏に沿ったものだったり、文字を繋いでいる線が影にも見えるところは「心を映す」という意味も含んでいます。
青木:「未来感」という話が出てきた時点で、それまでにあった要素を削いでシンプルにしていくことで、未来感を出すようにしました。今後「Anileap」が長く聴かれていくことを考えたときに、未来感はありながらも、古くも新しくもない、いい意味でニュートラルな印象にしたかったんです。それがこのB案になりますね。最初に作業していた頃は、ここまでシンプルなロゴになるとは考えていなくて、もっと寄せ集め感があったほうがいいのかなと思っていたのですが、結果として個人的にもお気に入りのロゴになりました。
松井:ループアニメ―ションとロゴデザインは同時に作業を進めていたのですが、色味を合わせたこともあって、お互い双方向で作り合った感覚があります。
――最後に、3月20日に正式リリースを迎えた「Anileap」の今後の展開予定について教えてください。
松井:正式リリース版ではループアニメーションが時間に合わせて変化するようになりましたし、LEAPちゃんのCV(キャラクターボイス)に上坂すみれさんを迎えてアニメCMも制作しましたので、今後LEAPちゃんのことをもっと愛してもらえるようにさらに深掘りしていきたいです。ほかにも「Anileap」のブランド自体を皆さんに好きになってもらえるようなグッズ・アパレルの展開や、弊社所属のアーティストとコラボレーションしたライブ配信上でのイベントを企画中です。将来的には、弊社のリアルイベントと連動やVR空間と掛け合わせた企画もできたらいいな…と考えております。僕は「Anileap」のことを「アニソンとの出会いと再会の場所」とよく言っているのですが、そういった場所としていろいろな形で世の中に浸透させていきたいです。
(取材・文=流星さとる)
■「Anileap」関連リンク
『Anileap アニリープ』24/7 Anime song live streaming
KAC公式YouTubeチャンネルにて配信中
配信URL:https://youtu.be/4FBW3mkdKOs
『Anileap アニリープ』オフィシャルプレイリスト
各種配信サイトにて公開中
https://anileap.lnk.to/playlistPR
『Anileap アニリープ』アニメCM公開中
https://youtu.be/4FYY-fyuNDY
「KING AMUSEMENT CREATIVE」公式サイト
http://king-cr.jp/
「KING AMUSEMENT CREATIVE」公式Twitter
https://twitter.com/kac_officialhp
「KING AMUSEMENT CREATIVE」公式チャンネル
https://www.youtube.com/c/kin-cr