デビュー40周年を迎える杉山清貴が恒例の野外ライブ開催! 100周年を迎える日比谷野音で音楽の宴!!
杉山清貴にとって野外ライブは20年以上続けてきたライフワークの一つ。それを自身の40周年イヤーにあたる2023年、開設100周年を迎える日比谷公園大音楽堂で迎えられるということは、この日のMCで杉山が「この野音が100年でおいらが40年、こんな日にライブができるなんて最高」と口にしたように感慨深かったに違いない。しかも、ここ数年はコロナ禍による規制を受け、野外ライブだけを見ても2021年は公演中止の憂き目にも遭い、2022年は規制下での開催となった。それを乗り越え、晴れて声出し解禁を受けての初夏のお祭り開催だけに、集まった数千のファンもだが、杉山自身が熱い滾りを最初から解放させる、そんなライブとなった。その証拠に、涼しさが静かに舞い降り始めた17時、バンドメンバーに続いて拍手で迎えられながら登場した杉山は、マイクスタンドの前に立つやいなや客席に向かって「いいね!!」。それは思わず漏れ出た、正直な想いだったろう。
想いの詰まったライブの始まりは「Kona Wind」から。杉山がアコギでメロディーを奏でながら、バンドメンバーと合唱するサビで始まるRemasterバージョンで。ステージのメンバーは声出しを忘れた観客たちを促すかのように手拍子でリードし、1曲目から一体感を味わわせるスタートとなった。そして1987年リリースの「水の中のAnswer」に入ると、杉山は歌詞中の「手を振る」に合わせて手を振り、会場も振り返す。さらには1988年リリースの「あの空も。この海も。」と、40年のときを経ても色あせない爽やかなナンバーを続けていく。次は、50才を迎えた2009年のバースデイにリリースしたアルバム『Veteran』から「夏が来た」「Mr.Happy Walk」。愛らしいメロディの前者では、バンドメンバーでサックス&パーカッション担当のJuny-aがフルートを手にし、杉山はアウトロで今の気持ちを乗せて「Life is beautiful」と高らかに歌うなど、見ごたえもある楽曲だった。一転、1987年リリースの「タイをはずして」に移り、長く自分を応援してくれてきたファンと共に重ねた年月を振り返るような、40年を行き来するような時間を演出する。「long time ago」では杉山自ら「いい曲」とたたえ、歌唱後には「気持ち良かった」の言葉も飛び出したが、実際ソロでの1stアルバムとなる『beyond…』はソロ・デビュー35周年を迎えた2021年に2nd、3rdアルバムと共にデジタル・リマスタリングで再発もされており、それだけの強度がある楽曲が杉山のレパートリーには揃っている証でもある。
その後のMCでは、1996年が初めてだったという日比谷野音での野外ライブに関するエピソードを紹介。避雷針に落雷したこともあったと思い出を語ると、「自分でレコーディングしていても懐かしさを感じる、ある意味力の抜けたアルバムになった」という実感を持てた最新アルバム『FREEDOM』のレコーディング話へ。その中からまず歌ったのは「Flow of Time」。「いつもアレンジをお願い」する佐藤準が曲を手がけ、杉山は作詞以外にも一人四役のガヤを楽しむなどしてレコーディングを楽しんだ“仲間の歌”と教えてくれた。
続いて、ボンゴが鳴らす「Feel So Sweet」を歌い、ここからは「ジャワイアン(=ハワイアンレゲエ)」のパートに。最初のMCで杉山は、今回のライブが「自分のライフスタイルの音楽」=“海”“南の島”を感じさせる曲に満ちており、「鬱々とした気持ちを海に投げて、楽しい夏を」という気持ちを込めたと話していた。その想いが色濃く表れているのがここからのターンであろう。杉山自身、移り変わる音楽の流行から飛び出した先で出会い、力をもらったのがジャワイアンであった。ただ、「作って意気揚々と事務所に送ったら、なんでこんなアルバム作ったんだと社長に怒られました(笑)」ということもあったようだが、自慢のミニアルバム『Island Afternoon』から「HAWAIIAN ISLAND STYLE」と、ハワイオアフ島の東端にある岬の名を冠した曲「MACAPUU」を聴かせ、人々の心にあるハワイを呼び起こす。アコギをつま弾く杉山によって、異国で見つけた「やりたい音楽」が、集まったファンと共有されていく。
歌唱後も、ハワイで「やりたい音楽」出会ったときの経緯とその想いをあらためてファンに告げていく。日本の音楽業界において、ヒット曲を量産することで時流や時代に合わせて音楽を作らざるを得ない中、その考えを捨て、何度かレコーディングしていたロサンゼルスに渡米することを決意した杉山は、ウエストコーストの音楽と出会い、一度は「これだよこれ」という想いに至る。だが、世界的に押し寄せるHIP-HOPやRAPの流れがLAに及び、別の土地として「ハワイが浮か」び、「それで行ってみたら大当たりでした」。ハワイで杉山は、「軽いロックを作ろう」「アコースティックな、トラディショナルな音楽に戻ろう」という想いに至り、ハワイを拠点に移したということだったようだ。やりたい音楽を求める自分の生き方に対して、「(ファンの)みなさんも振り回されて(笑)」と笑い話にしながら、自分の気持ちを押し通すような生き方ができたこと、そして、ついてきてくれたファンへの感謝を口にする。会場は杉山の告白に真摯に耳を向けていたがそれも一瞬、「内緒なんだけど実は夕暮れ待ちなんだよ(笑)」と杉山は長話の理由を吐露、会場の笑いを誘う。そう、「今日の終わりであり、明日につながる時間」で、杉山が「大好きな夕暮れ時」が訪れるのを待っていたのだった。だが、「気が急いちゃって。もういっちゃうよ」と待ちきれない杉山は「Sunset Beach」をスタート。アコギを手にした杉山の快美な歌声が流れ、それを受け取ってサックスの調べが空間に染み渡ると、再度バトンを受け取った杉山がアコギをつまびいて極上の空間を作り出す。だが徐々に、杉山が望むような黄昏れが近づいてくる。ライブでも、空に紫と紅が溶け合う時間を噛みしめるような甘い楽曲が続いていく。「素晴らしいギタリストと作った」アルバム『Island Afternoon』から再び、マラカスの音色が耳に溶け込む「サンセット・ラブソング」、そして「空から降りてくるLONLINESS」と並び立てられた。
歌い終えた杉山が今度は、「先を見て、先を見て」きた自分を例に出しながら、「もう後ろを見るのはやめようぜ」との言葉が。自身の経験を糧にしたエールにファンも大きくうなずく。そして続けざまに、杉山が生み出した最高のシティポップスが最新の形で会場に贈られてもいく。「A Hot Summer Day」は早逝した盟友、松下一也に手向けた一曲。歌う前には「いい時代になったな、いやぁ、楽しい、やっぱりライブは楽しい」けれども「そんな時代を生きてきた中で別れもあり」、「そういうことを経験して成長」し、「乗り越えながら走り続けていく」という心境も語っていた。「グッとくるかも一曲かもしれません」の紹介どおり、杉山の歌声と間奏のハーモニカがスローに夏の夜に響き渡る。一方、「Nightmare」は跳ねるビートでR&B要素を加えた進化形シティポップス。次の「Too good to be true」は大人なメロディーラインが聴く者をスウィングさせる逸品。どちらも最新アルバム『FREEDOM』の収録曲だ。杉山をして「60を過ぎて出会うと思わなかった」「もっと早く出会えれば……。でもそれもタイミングかな」と言わしめる自信の一曲でもある。この日のセットリストについて杉山は、期せずして自作曲が多くなったと感じたようだが、まさにこの3曲は杉山が歌詞を手がけた(「A HOT SUMMER DAY」は作曲も杉山)「That’s 杉山ワールド」。より楽曲に自身を投影させ、そこから生み出される独特の世界観へ聴衆を誘なっていった。
音楽性をいまだ進化させ続けている、そんな証明曲はまだ続く。前述のように杉山はかつて、Hip-Hopの勢いからその身を避けたが、この終盤のMCで「ハマっている」ことを告白。そして自身の音楽人生を、「音楽の流れが変わっていく中で自分の好きな音楽を見つける旅」であると話す。シティポップスが現在、世界で注目を浴びている流れから、最近は英字新聞の取材を受けたことも報告し、「新しいもの好きなので、変わっていくことが楽しくて仕方ないです」と笑みを浮かべた。そんな中で繰り出されたのが、杉山が透明感あるボーカルでハードにブラック色を強めた曲を歌い上げる「週末のアドレナリン」。貪欲に新しいエッセンスを自分の音楽に取り入る杉山を感じ、会場もヒートアップする。さらには、ギターを掻き鳴らすイントロからドラムスティックのカウントで始まったのは、70’sロックテイストの「LIVIN’IN A PARADISE」だ。杉山が繰り出す多彩な音楽は初夏の夜のパーティ感を一気に高め、観客は高揚感を全身で味わったあと、杉山から何度も何度も発せられる「ありがとう!」も浴び、ライブは一度幕を閉じた。
だが、熱が冷めやらないファンから、このまま帰らせないでくれとばかりに長く愛情を込めた拍手が続く。それに応えて杉山が真っ先にステージに戻ってくる。そして「自分だけが楽しみ過ぎちゃって」「みなさんを置いてけぼりにしちゃいませんでしたか?」の声かけ。甘い歌声と共に、杉山ライブの醍醐味である軽妙なトークも楽しんでいると、続けてBIGなニュースが告げられる。現在も『acoustic solo tour 2023』で全国を駆け巡っている杉山だが、2023年秋から冬にかけてバンドツアーを開催することも発表。さらには、来年春にオメガトライブとしてのラストツアーを決定した、とアナウンスする。歓声に沸くファンに対して、ラストとは言いつつも以前にも「ラストと付けたライブはやってるんだけど(笑)」と一抹の不安をぬぐいつつ、「来年65歳になりますが、結構いろいろなところに行くと思います」と杉山は宣言した。
アンコールの1曲目は、日比谷に集まった人々の昂った気持ちに応えるように、そして40周年イヤーにふさわしく、オメガトライブ時代の名曲「ALONE AGAIN」を。キーボードの軽やかなメロディに促され、今が最高という杉山清貴の歌声を耳に届かせる。歌い終わると続けて、「じゃあもう一曲やって帰ろう!」の言葉が。喜ぶ会場に向けて「ALL OF MY LOVE」を。ステージの上に促され、ステージ下もイントロから両手を高く挙げてのクラップが鳴り響き、会場は一体感を強めていく。杉山の雄大さとリズミカルさを兼ね備えた歌声が響き、野外ライブの時間は本当に終わりを告げた。
何度も書いたようにこの日のライブは、杉山が歩んできた中での功績と、時代を超えて惹かれずにいられない楽曲の魅力と、それらの礎の上に築かれた新しい杉山清貴を感じずにはいられなかった。40周年イヤーということで今年の5月10日には、ベストアルバム『オールタイムベスト』とオリジナルアルバム『FREEDOM』が同時リリースされているが、その2枚を重ねて聴くことで、過去と現在が絡み合う中で未来の新しい杉山を予感させる。この日の野外ライブもそうだが、「若いバンドメンバーと濃い中身を過ごし」「いい曲に出会うと燃える」というのが今の杉山の正直な気持ちだろう。「好き勝手にやってきたけど、諦めずについてきてくれてありがとう」と話してくれた杉山だが、聴く側としても、いつまでも「杉山清貴」でいてくれてありがとうの想いだ。秋ツアーも楽しみであるし、そこで詳細が告げられるというオメガトライブのツアーも楽しみで仕方がない。
TEXT:清水耕司
PHOTO:粂井健太
◾️杉山清貴 The open air live “High & High” 2023 日比谷野外大音楽堂
[セットリスト]
1 Kona Wind
2 水の中のAnswer
3 あの空も。この海も。
4 夏が来たね
5 Mr. Happy Walk
6 タイをはずして
7 long time ago
8 Flow of Time
9 Feel So Sweet
10 HAWAIIAN ISLAND STYLE
11 MAKAPUU
12 Moonlight Dancin’
13 Sunset Beach
14 サンセット・ラブソング
15 空から降りてくるLONLINESS
16 A HOT SUMMER DAY
17 Nightmare
18 Too good to be true
19 週末のアドレナリン
20 LIVIN’IN A PARADISE
En1 ALONE AGAIN
En2 ALL OF MY LOVE
[BAND MEMBER]
Piano:アンドウヒデキ Keyboard:杉浦秀明
Drums:SION Sax&Percussion:Juny-a
Bass:山本連 Guitar:入江誠
[セットリストプレイリスト]
https://lnk.to/kt0521setlist
◾️リリースインフォメーション
「FREEDOM」2023年5月10日(水)発売
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
【通常盤(CD+Blu-ray)】
CDショップ:https://lnk.to/Kiyotaka_FREEDOM
配信サイト: https://lnk.to/KT_FREEDOM
「オールタイムベスト」2023年5月10日(水)発売
CDショップ:https://lnk.to/Kiyotaka_40th
プレイリスト:https://lnk.to/KT_ATB