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Bimiが示したスタイルの継続と新たな音楽の可能性 メジャー1stアルバム『R』レビュー

Bimi _R_

HIPHOP・ロック・R&B、更には演歌や歌謡など幅広い音楽を取り入れた独自のミクスチャースタイルで活躍中のアーティストBimi。
多彩な音楽ジャンルを取り入れ融合した彼のクリエイティブな音楽は、2023年10月のメジャーデビュー以降さらに磨かれ、現在進行形で深みを増している。

そんなBimiが4月9日にメジャー1stアルバム「R」をリリースした。今回のアルバムタイトルは「Reborn(=再生)」「Restart(=再出発)」といった言葉の頭文字と、自身の本名「Ryota」のイニシャルを由来としている。メジャーデビューから1年半が経過し、そこで得た経験とそこから見える新たな可能性を提示した今作は、今まで以上に挑戦的な試みが多い1枚となっている。

ここからはアルバム収録曲のうち、ボーナストラックを除く12曲をレビューしていく。彼の雑食ミクスチャーの世界が、新章突入でどのように変化していったのか。じっくりと見ていくことにしよう。

M1「辻斬り」


かつて武士が夜な夜な通行人に対して行ったとされる辻斬り。そんな物騒な行為を題材にした楽曲は、Bimiのテクニカルで変幻自在なフロウに圧倒される1曲だ。一方で、曲調はチルな雰囲気すら感じさせるほどオシャレで心地よく、和風サウンドとヒップホップが高いレベルで融合したサウンドと、リズミカルそれでいて息つく間もなくバッサバッサと斬っていく強者感のあるBimiのフロウとのギャップが印象的である。

M2「百鬼夜行 feat.Whoopee Bomb」


オートチューンも駆使したZ世代のラッパー・Whoopee Bombの個性的な歌声と、世界的に流行しているジャージー・クラブのビートが織り交ざった、妖しい雰囲気を醸し出す疾走感あふれるアッパーなヒップホップ。アーティストたちとのコラボレーションや繋がりを、妖怪たちが夜に列をなして気ままに歩き回る“百鬼夜行”に見立てる発想も面白い。マイクで連なる群れは音楽に興味のない人たちからは恐れられるかもしれないが、中に入ってみれば楽しさしか感じられないものだ。

M3「無敵 feat.呂布カルマ」


噛み付く相手を一蹴するような強い言葉が立ち並ぶ、痛快なリリックが印象的なファイトチューン。日本のヒップホップ界、そしてラップバトルシーンで大きな存在感を放つラッパー・呂布カルマとのコラボレーションという事実が、「無敵」というタイトルに説得力を持たせているのは間違いない。その無敵感をさらに増幅させているのが、様々な楽曲に影響を与えているモーリス・ラヴェルのクラシックの名曲「Boléro」をサンプリングするという仕掛け。この柔軟な楽曲作りも、ミクスチャースタイルのBimiらしい有り様と言えるだろう。

M4「Bright feat.YUKI(from MADKID)」

活動を続けていく中で付けられた様々な“傷”が、巡り巡って現在の彼らの輝きの糧となっていく。BimiとYUKIというダイヤモンドがどのような人生を経て磨かれてきたのか、そんな彼らの人生の一端を垣間見ることができるのがこの「Bright」である。彼らの輝きを表したような煌びやかな鍵盤の音色も印象深い。力強くしなやかに歌われるサビの「shine brightly」の部分は、彼らの不屈の精神を表現したリリックを味わう前と後でその覚悟が違って聴こえることだろう。

M5「額-HITAI-」

これまでのBimiの楽曲ではあまり見られなかった、昨今の不安定な国際情勢や国内政治をテーマにした社会派なリリックが目を惹く1曲。世間に対する怒りや違和感を言葉巧みに描写しながら、ラストでは世界平和への祈りと覚悟を素直な言葉で示している。聴いている我々にも日本の未来について立ち止まって考えるよう促しているのか、Bimiの代名詞である勢いのあるフロウではなく、彼の言葉をじっくりと聴かせるような歌唱表現となっているのも興味深い。

M6「Right-Hand Chance」

社会派な楽曲の次にギャンブルをテーマにした曲を並べるのは如何にもBimiらしい。カプセルトイ専門店「#C-pla」とのコラボソングというが、中毒性の高いチャカチャカしたサウンド、縦ノリしたくなる4つ打ちのデジタルビート、脳内物質がドバドバ出てくる様子がビンビンに伝わるコミカルなリリックなど、この曲には”THE Bimi”と呼ぶべき要素が満載だ。そしてBimiの音楽の醍醐味でもある、緩急・しゃくり・裏返りといった技術を駆使したフロウが合わさることで、その享楽性が何倍にも膨れ上がる。この曲もずっと聴いていられる麻薬のような1曲だ。

M7「軽トラで轢く-味変- feat.椎名佐千子」

演歌とラップを融合したインディーズ時代の楽曲が、本職の演歌歌手・椎名佐千子をゲストに迎えて華麗にリメイク。椎名の歌唱によって演歌パートのドラマ性と感情表現が一気に底上げされたことで、Bimiのラップパートの勢いと狂気性がさらに際立つ結果となっている。“軽トラで轢く”という暴力的なパワーワードが、こぶしを交えたパワフルな歌い回しによって、現実的な選択肢であるように説得力を持って聴こえてしまうのも面白い。

M8「暴食」

時にリズミカルに、時にラディカルに紡ぐ高速フロウ、そして喉の寿命を削り取るかのようなデスボイスやシャウトなど、Bimiのリミッターを取り払ったかのようなパンチ力のあるパフォーマンスに圧倒される1曲。欲望の赴くまま何もかも喰らい尽くす獣のようなリリックに呼応するかのように、バックで流れるハードロックサウンドのグルーヴ感も楽曲が進むにつれてどんどん増していく。まさに七つの大罪の1つである「暴食」を冠するに相応しいアップチューンだ。

M9「All the things feat.Sit(from COUNTRY YARD, mokuyouvi)」

メロコアパンクシーンで存在感を放つSitをフィーチャリングアーティストとして迎えた楽曲は、ここまでのアルバムの激しい流れを爽やかに浄化するようなポジティブソングとなっている。このような爽快な雰囲気は、これまでのBimiの楽曲としてはかなり珍しい要素だ。煌びやかなギターサウンドをバックにBimiとSit の2人の掛け合いで生まれる歌声からは、 “重なった2つの音 Everywhere we go”という歌詞のとおり、どこまでも走っていけそうなピュアな無敵感が感じられる。

M10「Nemo」

まるで葬送曲のような、自身の最期を自ら送り出すアコースティックな1曲。特にBimiの歌声に感情が大きく乗せられたラスサビの盛り上がりはこの楽曲の最大の聴きどころである。ラテン語で“何者でもない”を意味する「Nemo」を冠したタイトルどおり、歌詞には何者にもなれなかった1人の青年の吐露、しかし誰かに覚えていてほしいという切なる願いが込められている。他人と比較しがちな現代社会に生きる多くの人々にこそ刺さる歌詞ではないだろうか。

M11「ゴースト feat.新藤晴一(from ポルノグラフィティ)」


DJ dipと作り上げられたBimiの楽曲群に、初めてアーティストによる提供楽曲が加わった。ポルノグラフィティの新藤晴一が手掛けたロックバラードは、歌声・サウンド・メロディすべてに沁みる要素が散りばめられた渾身の1曲である。儚い愛の一片を描いた物語性のある歌詞に、繊細さとパワフルさが同居したBimiの歌声が加わったことでドラマチックさが一気に上昇しているのも見逃せない。Bimiらしさを感じさせながら彼の新たな扉を開けた1曲と言っても過言ではないだろう。

M12「27th-味変-」

“27th Club”というミュージシャンの早世に関する概念をモチーフにしたインディーズ時代の楽曲の味変リメイク版は、ラウンジミュージックのようなお洒落でムーディーな雰囲気を強調するアレンジに。死という概念を漠然と考えていたであろう3年前のリリース当時からは、Bimiのキャリア・環境・時間など何もかもが大きく変化している。そんな27歳の誕生日を目前に控えた現在の彼の心の機微を、この曲の歌声の表現や抑揚からなんとなくでも感じ取れることができるに違いない。

今回収録された6曲のアーティストコラボ楽曲が特に顕著だが、そのジャンルの第一人者とのコラボによって新たなアプローチが加えられたことで、これまでBimiが描いてきた様々なジャンルのミクスチャーなスタイルがさらに洗練されたようにも感じられる。Bimiにとって新たな景色が見えた1枚になったことは間違いない。

充実の1stアルバムを引っ提げて、4月下旬から7月上旬にわたり全国10都市でライブツアー「Bimi Release Party Tour 2025 -R-」が開催予定。そして自身の誕生日でもある4月28日にはツアーとは別タイトルになるライブイベント「Bimi Live Galley #04 -Dear 27th-」も行われる。アルバムのサブテーマにもなっていた“27th Clubからの昇華“が今回の一連のライブでどのように表現されるのか、ファンならずとも注目したいところだ。

Information

RMajor 1st ALBUM『R』(ヨミ:アール)
発売日:4月9日発売
品番:KICS-4189
商品形態:CD only
定価:¥3,600(税込)
仕様:限定スリーブケース(初回プレス分のみ)

<収録内容>
M1. 辻斬り
M2. 百鬼夜行 feat.Whoopee Bomb
M3. 無敵 feat.呂布カルマ
M4. Bright feat.YUKI(from MADKID)
M5. 額 -HITAI-
M6. Right-Hand Chance
M7. 軽トラで轢く-味変- feat.椎名佐千子
M8. 暴食
M9. All the things feat.Sit(from COUNTRY YARD, mokuyouvi)
M10. Nemo
M11. ゴースト feat.新藤晴一(from ポルノグラフィティ)
M12. 27th-味変-
M13. Bonus Inst -R- (Prod. DJ dip)

buy:https://elr.lnk.to/RCD
listen:https://elr.lnk.to/BimiR

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