大巨匠 ウィリアム・フリードキン監督関連3作一週間緊急限定上映!『フリードキン・アンカット』国内初、そして最後の上映 『恐怖の報酬【オリジナル完全版】』国内最終上映 『クルージング』ふたたび

『フレンチ・コネクション』(71)でアカデミー賞受賞、『エクソシスト』(73)は当時ホラー映画史上最大のヒットを記録したほか、『真夜中のパーティー』(70)、『L.A.大捜査線/狼たちの街』(85)、『ランページ/裁かれた狂気』(88)など、その映画表現に一切の妥協を許さず、手加減なし、容赦なしの鬼監督として知られたウィリアム・フリードキン。特に『エクソシスト』では撮影現場でショットガンをぶっぱなし、素人役者を平手打ちにし、本物の恐怖を植え付けて本物の様子をカメラにおさめたことなどが知られ、その表現のためなら手段を選ばない姿勢が周りを震え上がらせた監督だ。そんなフリードキンの不遇の監督作『恐怖の報酬【オリジナル完全版】』(77)を2018年リバイバルで大ヒットに導いたシネマート新宿にて7月11日から7月17日の一週間限定でウィリアム・フリードキン監督関連の3作品が上映となる。これは『恐怖の報酬【オリジナル完全版】』が権利終了となることを機に緊急企画された上映。『恐怖の報酬【オリジナル完全版】』は今回が国内最終上映、さらにフリードキンの素顔に迫ったドキュメンタリーである『フリードキン・アンカット』(18)が一回限りの国内初上映、そして昨年のまさかのリバイバル公開で話題を集めた衝撃作『クルージング』(80)がふたたび上映となる。
フリードキンの最も知られる、表舞台の代表作が『フレンチ・コネクション』と『エクソシスト』だとすれば、裏街道の代表作が『恐怖の報酬【オリジナル完全版】』と『クルージング』だ。『恐怖の報酬【オリジナル完全版】』はフリードキンが1コマも修正する箇所がないと語った、そのキャリア史上最も心血を注ぎ、映画作家の狂気と執念を刻んだ渾身の一作。人生の底から這い上がるために300キロにわたる一触即発ニトロ運搬に命を賭けた男たちの運命を冷酷非情なリアリズムで描き切った。2018年に大ヒットとなった日本再上陸はフリードキン自ら陣頭指揮を執り、一時作品の本質から外れた予告編を制作してしまった日本スタッフに対し容赦ない鉄槌を下し、映画に一切妥協しない姿勢を躊躇なくみせた。その時のフリードキンの言葉は次のとおりだ。
「この予告編はただの混乱で、まったく意味不明だ!こんなものを承認できるわけがない!まるで誰かが私の映画を肉挽き機にかけたかのようだ!」。
<俺の作品に何てことをしてくれるんだ!>というニュアンスの凄まじい圧力に、日本スタッフは恐れおののき直ちに修正作業に入った。
『クルージング』は実際に発生していたNYゲイ・コミュニティ猟奇連続殺人の容疑者が、自身のオファーによって『エクソシスト』に出演したX線技師だったことに衝撃を受けたフリードキンが現実をベースに映画製作を決意した猛篇。面会したフリードキンに対し容疑者のX線技師はSMクラブで会った男とアパートでセックスしてからフライパンで頭部を殴打、胸をナイフで切り刻んだと告白した。想像を絶する狂態を脚本に盛り込み、フリードキンはかつてないクライム・サスペンス作り上げ、以後、世の中に同様の作品は現れていない。それはあまりの内容に、フリードキン以外の何者も作ることができないからだ。主演のアル・パチーノは当初の脚本から変わった完成版を試写で観て愕然とし、フリードキンに抗議するも受け入れられず、映画の宣伝にかかわることを拒否、作品との関係を断った。フリードキンは作品しか見ていない、自身のビジョンの具現化にのみ邁進することがわかるエピソードだ。
そして容赦ない鬼ともいえるフリードキンの素顔に迫った『フリードキン・アンカット』はフランシス・フォード・コッポラ、ウェス・アンダーソン、クエンティン・タランティーノ、デイミアン・チャゼル、ウォルター・ヒル、ウィレム・デフォー、エドガー・ライトなど錚々たる映画人たちとともにフリードキン自身が自らについて語るドキュメンタリー。フリードキンの言葉のひとつはこれだ。「俳優も監督もどちらも職業だ。仕事なんだ。自分を芸術家だなどと抜かすバカがいるが、頭がイカれてる。仕事をこなした先に初めて芸術が生まれる。自分が芸術家などと思った瞬間、終わりだ。プロフェッショナルに徹してただ努力することが大事だ。そして物語を作り続けることだ」。『フリードキン・アンカット』はこのようなしびれる言葉に満ちている。
世の中に蔓延する忖度とは無縁の、映画表現のためには一切の手加減をしないフリードキン。今回の3作品の限定上映は2023年に惜しくも世を去ってしまったフリードキンの人間性を噛みしめるとともに、観る者に自身の行動や思考を検証させる上映ともなるはずだ。
INFORMATION
容赦なき大巨匠ウィリアム・フリードキン3作上映
7月11日(金)-7月17日(木) シネマート新宿にて容赦なく一週間限定上映
・『フリードキン・アンカット』:7/12(土)
・『恐怖の報酬【オリジナル完全版】』:7/11(金)、7/13(日)、7/14(月)、7/16(水)
・『クルージング』:7/15(火)、7/17(木)
※上映時間は劇場HP等にて確認ください。
キングレコード提供 コピアポア・フィルム配給
『フリードキン・アンカット』
2018年|イタリア映画|106分|原題:FRIEDKIN UNCUT
© 2018 Quoiat Films, All Rights Reserved.
監督:フランチェスコ・ジッペル
出演:ウィリアム・フリードキン、フランシス・フォード・コッポラ(『ゴッドファーザー』『地獄の黙示録』監督)、エレン・バースティン(『エクソシスト』主演)、ウェス・アンダーソン(『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』監督)、クエンティン・タランティーノ(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』監督)、マシュー・マコノヒー(『キラー・スナイパー』主演)、デイミアン・チャゼル(『ラ・ラ・ランド』監督)、ウォルター・ヒル(『ストリート・オブ・ファイヤー』監督)、ウィレム・デフォー(『L.A.大捜査線/狼たちの街』出演)、エドガー・ライト(『ベイビー・ドライバー』監督)、ダリオ・アルジェント(『サスペリア』監督)、マイケル・シャノン(『BUG/バグ』出演)、ウォロン・グリーン(『恐怖の報酬』脚本)、ウィリアム・ピーターセン(『L.A.大捜査線/狼たちの街』主演)、ジーナ・ガーション(『キラー・スナイパー』主演)、キャレブ・デシャネル(『キラー・スナイパー』撮影)、ズービン・メータ(インド出身の指揮者)、ランディ・ジャーゲンセン(元ニューヨーク市警の捜査官)、フィリップ・カウフマン(『SF/ボディ・スナッチャー』監督)
『恐怖の報酬【オリジナル完全版】』
1977年|アメリカ映画|121分|原題:SORCERER(魔術師)
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製作・監督:ウィリアム・フリードキン
脚本:ウォロン・グリーン
音楽作曲・演奏:タンジェリン・ドリーム
出演:ロイ・シャイダー、ブルーノ・クレメル、フランシスコ・ラバル、アミドゥ
『クルージング』
1980年|アメリカ映画|102分|原題:CRUISING
© 2024 WBEI
脚本・監督:ウィリアム・フリードキン
原作:ジェラルド・ウォーカー
音楽:ジャック・ニッチェ
出演:アル・パチーノ、ポール・ソルヴィーノ、カレン・アレン、リチャード・コックス