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邦題『パトリックとクジラ 6000日の絆』(原題:『Patrick and the Whale』)トークイベント付き一般試写会(8/14実施)報告レポート

邦題『パトリックとクジラ 6000日の絆』(原題:『Patrick and the Whale』)トークイベント付き一般試写会(8/14実施)報告レポート

「海は、世界でこれまで誰も見たことのないものを初めて見せてくれる場所」
―パトリック・ダイクストラ

「同じネイチャーカメラマンとしてこの素晴らしい映画を見せてくれたことを感謝しています」―岡田裕介

「僕らクジラ好きでも、この映画では知らないことがたくさんある」
―あらたひとむ

クジラに魅せられて、ウォール街の弁護士から転身し、水中カメラマンとして活躍するパトリック・ダイクストラとクジラたちの交流を映し出すドキュメンタリー映画『パトリックとクジラ 6000日の絆』の一般試写会が8月14日(木)に都内で開催。上映後にはパトリック本人がオンラインで登場し、自然写真家の岡田裕介、ホエールアーティストのあらたひとむと共にトークセッションを行なった。

オンラインでスクリーンにパトリックが映し出されると、映画を観たばかりの客席からは大きな拍手がわき起った。実は、パトリックは数日前まで、アルゼンチンでシャチの撮影を行なっており「25時間かけて、ブエノスアイレス、ヒューストンを経由して昨日、
家に戻ったばかり」とのこと。しかも、時差の関係で現地は朝の5時台とのことだったが「(トークセッションへの参加に)ワクワクしています。映画を楽しんでいただけたことを願っています」と笑顔を見せた。

自然写真家の岡田裕介は、本作を鑑賞して「大前提として6000日という長い年月をかけて撮影したという中で、パトリックさんの心の動きや心情が心に響きました」と語った。

パトリックは、本作で見られるマッコウクジラの“立ち寝”の姿や、クジラと一緒に回転する様子などの貴重な映像の撮影を達成するまでの苦労について「何度も旅を重ねて、これらの映像を撮ることができました。BBCのドキュメンタリーと同じように、スタッフ陣もいろんなチームを組んで撮ることができました。とはいえ、完成したドキュメンタリーを見ている方の中には、2~3日ほど現地に来たり、1時間半のツアーに参加したりしただけで、すぐに撮れるものと思っている方もいて、「いつクジラに会えるの?」「立ったまま寝るクジラはいつ見られるの?」と聞くんですね(苦笑)。そんな簡単に見られるものではないんです。長く時間をかけたからこそ撮れた映像です。この映画では15年間、私が撮りためたアーカイブ映像も使用されています。水の透明度、気候も影響するものなので、マッコウクジラに会えるのも、1年に1か月あれば良いほうです。本当に時間をかけて撮影を達成しました」と明かしてくれた。

ちなみに、先日8月11日(祝・月)には、NHK-BSのワイルドライフにて岡田が撮影に参加した「南大西洋フォークランド諸島 謎のパンダイルカ 大集結を追う!」が放送された。岡田はフォークランド諸島沖でイロワケイルカと呼ばれる世界最小級の白黒模様のイルカの撮影に挑んだが、「野生生物の撮影をするにあたって、僕もパトリックさんと同じように心の交流を大切にしています」と語る。そして「2か月ほど現地に滞在する中で、イロワケイルカとどんな交流ができるかと楽しみにしていたのですが、思ったよりも透明度が悪く、またイルカたちは凄まじいスピードで泳ぐので、なかなか交流できませんでした。でも、そんな中でも、彼らが僕のほうに寄ってきてくれたり、グルグルと僕の周りを回ってくれたりもして、長いドキュメンタリーとして第一歩の撮影ができて、みなさんにお届けできたんじゃないかと思います」と撮影をふり返った。

パトリックは、岡田の言葉に「素晴らしいと思います。イロワケイルカはタフでシャイでもありますし、冷たい水の中に生息しているので、追うのは大変だったと思います。水の透明度の悪さもあって、非常に難しい撮影だったでしょう。きっと何年もかかると思いますが、素晴らしいファーストステップであったと思います」と岡田の苦労をねぎらった。

パトリックは、クジラに魅せられて個人的に撮影を重ねる中で、BBCなどから声が掛かるようになり、自然カメラマンとしてのキャリアを積み重ねてきたが、改めて水中撮影の魅力について尋ねられると「私は海洋学者ではなく、普通の人間です。海の専門家ではないんですが、海は、そんな普通の人にも、世界でこれまで誰も見たことのないものを初めて見せてくれる場所だと思います。陸の生物だとなかなかそうはいかないんですが、海の生物に関しては、未知の部分が多いので、世界中の誰も見たことのないものを自分が初めて見るというチャンスを得ることができます。そこが私にとってはエキサイティングで、海での撮影の魅力だと思います」と語った。

この答えには、クジラをこよなく愛し、ホエールアーティストとして活動しているあらたも深く納得した様子で「僕らクジラ好きでも、この映画では知らないことがたくさんあり、パトリックさんに感謝しています」とうなずいていた。

一方、岡田は高校時代に見た戦争写真をきっかけに写真家を志し、いまではアーティストのライブ写真から自然の撮影まで幅広く活躍しているが、そんな岡田にとっての水中撮影の魅力を問うと「僕もパトリックさんと同じ気持ちです。自分の知らない世界に身を置いて、まず大前提として自分が楽しんで、ワクワクして、そこで過ごしながら、その場の美しい景色や心が動くシーンを切り取って、みなさんに届ける――そんな仕事が楽しいですし、それを届けた先で、みなさんが喜んでくださったり、時に涙を流してくださったりしてくれるカメラマンという仕事は幸せだなと思っています」と語ってくれた。

トークでは、岡田がパトリックに「クジラ以外にも、世界中の生物と交流をされてきたかと思いますが、とっておきのエピソードがあれば教えてください」とお願いも。パトリックは満面の笑みで快諾し「私は陸の生物も撮影していて、例えばユキヒョウを撮ったこともあります。ただ、やはり最も興味をかき立てられるのは海の哺乳類なんです。マッコウクジラの次となると、シャチやオルカが好きです。シャチは非常に賢くて、グループで行動し、社交性もある生き物です。シロナガスクジラはあまり社交性がなくて、いつも食べてばかりなんですが、私は社交性を持っているシャチやオルカに興味をかき立てられ、ノルウェーやスリランカで撮影を行なってきました。これまでに10本以上のドキュメンタリーを撮っていますし、昨日、アルゼンチンから帰ったばかりですが、そこでもシャチを撮っていました」とクジラにとどまらない海の生き物への愛と情熱を熱く語ってくれた。

トークの最後に、岡田は改めてパトリックさんに「同じネイチャーカメラマンとしてこの素晴らしい映画を見せてくれたことを感謝していますし、仲間に会えたことを幸せに思っています。いつか実際にお会いできるのを楽しみにしています!」と感謝を口にする。パトリックは観客に向けて「今日はこの映画を観てくださってありがとうございます。映画を観る2時間前より、少しでもクジラを好きになってくださったら嬉しいです。」と呼びかけ、温かい拍手の中、トークセッションは幕を閉じた。

STORY

ウォール街の弁護士から転身し、水中カメラマンとして活躍するパトリック・ダイクストラ。BBC「ブルー・プラネットⅡ」(2017年)で撮影を担当したエピソードで英国アカデミー賞(BAFTA)受賞経験を持つ。少年時代に博物館でシロナガスクジラのレプリカを見て衝撃を受けて以来、クジラのとりことなったパトリックは、世界中を旅し、20年もの間クジラを追いかけてきた。クジラを知り尽くしたパトリックだからこそ誰よりもクジラに近づくことができ、他の人にはできない貴重な映像の撮影に成功してきたのだ。2019年のある日、パトリックはドミニカの大海原でメスのマッコウクジラと遭遇する。クジラはパトリックに興味を持ち、コミュニケーションを取ろうとしていた。パトリックはそのクジラを「ドローレス」と名付け、ドローレスがクジラの知られざる生態を教えてくれると信じて再び彼女を探し始める――。
クジラに魅せられたカメラマンとクジラたちの親密な交流を描くドキュメンタリー『パトリックとクジラ 6000日の絆』。本作で監督を務めるのは、野生動物映像の世界で長年にわたり編集者、脚本家として活躍し、エミー賞だけでも50以上の受賞歴を持つマーク・フレッチャー。大きな体を立てて眠るクジラの姿、パトリックに興味津々で近寄ってくるメス、遠くまで伝わる鳴き声や知られざるオスたちの絆――息を呑むように美しい海の映像とともにマッコウクジラの魅力を映し出す本作は、目にする機会の少ないクジラの知られざる生態をカメラに収め、パトリックとクジラたちとの交遊を映し出す!

キャスト/スタッフ

監督:マーク・フレッチャー
出演:パトリック・ダイクストラ、ドローレス(マッコウクジラ)、キャンオープナーと赤ちゃんホープ(マッコウクジラ)他
2022年/オーストリア/英語/72分/カラー/ビスタ/5.1ch/原題:Patrick and the Whale/日本語字幕:金関いな/配給:キングレコード
©Terra Mater Studios GmbH 2023
patw6000.com

PROFILE

パトリック・ダイクストラ(Patrick Dykstra)
1979年9月4日生まれ。アメリカ・コロラド州デンバー出身。幼い頃からアウトドアに親しむ。ニューヨーク大学ロースクール卒業後、アメリカ最大級の法律事務所に就職し、8年間弁護士として働く。その間、資金を貯めながら、世界中の海へクジラを探しに出かける。個人的にクジラの撮影をしているうちにBBCなどの目に留まり、撮影の依頼が入るように。人があまり訪れない過酷な場所の撮影を得意とする。訪問国は100か国以上。
2017年、BBC「ブルー・プラネットⅡ」収録の4つのエピソード撮影を担当。シロナガスクジラの授乳シーンやヒートラン、空中からマンタのトルネード摂食シーンを世界で初めて撮影し、英国アカデミー賞(BAFTA)を受賞する。

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