【全曲レビュー】表現者・宮野真守の真髄を見よ、変幻自在な“顔”を見せる8thアルバム『FACE』

声優・俳優・アーティスト・ラジオパーソナリティ、さらに近年ではバラエティ番組やテレビドラマなど様々なフィールドで活躍する宮野真守。11月19日に3年ぶりとなる8枚目のオリジナルアルバム「FACE」をリリースした。
アシンメトリーなアートメイクを施し、“演じる”自分と“素の自分”という印象の異なる2人の宮野真守が向かい合う姿が描かれたアルバムには、新曲はもちろんのこと、アニメの主題歌や富士急ハイランドとのコラボテーマソングなど、様々な楽曲が収録されている。初回限定盤にはフォトブックと、Music Videoやメイキングを収録したBlu-rayが同梱。ファンのみならずとも是非とも手に入れたい1枚だ。
ここからはアルバムに収録される全曲のレビューを行っていく。宮野真守のどのような“顔”が描かれたのか、楽曲とレビューを通して詳しく見ていこう。
「VACATIONING」
「VACATIONING」=「休暇」という曲名どおり、日々を忙しなく生きる現代人の心を穏やかにさせるようなリラックスした空気感が印象的。アップテンポでありながらチルアウトな雰囲気を残す不思議なサウンドは、南国の爽やかな風を感じられるような心地よさに包まれており、その音をナチュラルに乗りこなす宮野の歌声も聴いていてとても気持ちが良い。11月から始まるライブツアーのタイトルにこの曲名が使われていることもあり、『「VACATIONING」の思い出はいつまでも残り続ける』という歌詞のメッセージは、まさにライブに来た人たちへのメッセージそのもの。ツアー終了後に聴くとまた印象が変わるのかもしれない。
「The Battle」
偉人の名言を使ったアニメ『現代誤訳』の主題歌ということもあり、歌詞には“名言”や“解釈違い”といった関連する言葉が数多く散りばめられている。そこに、ダンサブルなパーティーチューンの要素と「The Battle」=「自分自身との闘い」というテーマを内包することでアーティスト・宮野真守の楽曲へと見事に昇華。流れに身を任せたようなリズミカルなラップパートなど、新たなアプローチが取り入れられているのも面白い。
「ジャンプしてみて」
宮野真守のエンターテイナーな一面をフィーチャーした、リズミカルでファンキーなブラスポップ。1番の歌詞で突如不良に絡まれるシーンが始まったと思えば、2番ではパーマ屋でシャンプーをお願いするワンシーンが描かれるなど、歌詞の世界観は終始コミカルなドラマ調で進んでいく。一方で、宮野のボーカル表現やサウンドは最初から最後までオシャレなアプローチを維持しており、歌詞とのアンマッチ感も非常に面白い。ライブではオーディエンス全員とジャンプして盛り上がれること間違いなし。
「Apollo」
富士急ハイランドとのコラボ企画によって制作されたという経緯もあり、楽曲全体に行き渡るキラキラとした非日常感やハッピーな雰囲気が印象的。ワクワクとした子供心を思い出すような1番と、デートソングを意識した2番で歌詞の視点がガラリと切り替わるが、老若男女すべてが楽しめるテーマパークの魅力を詰め込んでいると考えればそのアプローチも納得である。宮野の優しい歌声も楽曲の楽しさをさらに底上げ。何度聴いても飽きない1曲だ。
「R.P.G」
これまでの宮野の楽曲には珍しい、ロールプレイングゲームをモチーフにした1曲なだけあって、ゲーム用語を散りばめたリリックや、ゲームの効果音を連想させるエフェクトやアレンジなど、所々に盛り込まれた遊び心が特徴的。その世界観に引っ張られたからか、宮野のボーカル回しも実に変幻自在で、Aメロのお茶目なラップパートからBメロの激励台詞まで、自由な発想から飛び出した歌声は聴く人の心を笑顔にさせてくれるに違いない。「ジャンプしてみて」とはまた異なる方向性でエンタメに振り切った1曲だ。
「Sing a song together」
2023年開催のライブツアー「SINGING!」のための書き下ろされた楽曲。コロナ禍を経てライブでの声出しが解禁されたタイミングでリリースされた楽曲ということもあり、ファンと一緒にシンガロングすることの楽しさ、そして宮野とファンの双方が共に支え合う尊い関係性を再認識するような内容となっている。また、徐々に日常を取り戻していった喜びだけでなく、それまでに味わった辛さもいったん受け止めたうえで前へ進もうとする本人作の歌詞もとても実直。宮野の誠実な人柄が存分に伝わってくる1曲だ。
「Invincible Love」
自身も桜川九郎として出演するアニメ『虚構推理 Season2』のEDテーマとなった、「Invincible Love」=「究極の愛」を歌う宮野真守のオシャレなバラードナンバー。ささやくような甘く優しいフェイクや歌声でムーディーな雰囲気を演出しつつも、楽曲の内容は真っ直ぐでイノセントなラブソングというギャップもまた非常にグッとくる要素だ。相手の人生の最後まで寄り添うと誓う歌詞と、幻想的でロマンチックなサウンドにいつまでも酔いしれていたい。
「Kiss me now」
誰にも邪魔されない2人だけの愛し合う時間を描いた、宮野のセクシーな魅力に溺れたくなる1曲。2人の甘い関係性をリズミカルなダンスビートに乗せて表現した楽曲ということもあって、宮野の歌声も実に魅惑的。吐息混じりの甘美な歌声で聴く人を陶酔させたかと思えば、2番の軽やかなラップパートのフロウでカッコよさとテクニカルさを押し出していく。この曲を聴いて彼の魅力に落ちない人などいないだろう。
「DRESSING」
光も闇もどちらもまとい唯一無二の輝きを放つアーティスト・宮野真守の矜持をそのまま歌ったような1曲は、これまでの楽曲には珍しい、夜の都会の景色を連想させるシティポップサウンドが特徴的。誰の評価もいらない、過去に囚われず自分らしさを貫くという宣言など、サウンドから感じたオシャレな印象と、歌詞のストイックな内容のギャップも魅力的だ。
「繭」
昨年開催されたライブツアー「DRESSING!」内でサプライズ披露された楽曲。ツアーのテーマソング「DRESSING」の対になる曲と本人がライブで発した、“必要な孤独“をテーマにした宮野真守の新たな一面が垣間見える1曲。これまで多くの楽曲で困難を切り拓いていくポジティブな姿勢を見せていただけに、「進むだけがすべてじゃない」「Just wanna give a little shoutout」といった苦しさが滲むような言葉が次々と紡がれる様はなかなか衝撃的である。どこか憂いを帯びた繊細なボーカル表現も新鮮だ。
「零光」
大切な人がいなくなってしまう絶望感を表現した前半パートを経て、そこから立ち上がり救い出そうと前を向く様子が宮野の切実な歌声とともに描かれていく。聴く人の感情をざわつかせ、否が応でも揺さぶってくるドラマチックなパワーバラードだ。バックで流れるピアノやストリングスのダイナミックな音色も楽曲の世界観を盛り上げるのに十分な役割を果たしている。楽曲自体は3分15秒と短いが、聴き終わった後は1本のドラマを見終えたような充実感を味わえるはずだ。
「AUTHENTICA」
“本物”を意味する「Authentic」を冠した1曲は、2024年開催のオーケストラコンサートのために書き下ろされた壮大なバラードナンバー。宮野真守の人間味あふれるエモーショナルな歌声と、広がりのあるシンフォニックなサウンドとの親和性の高さに改めて気付かされる楽曲でもある。そして、宮野自身の言葉で丁寧に綴られた優しい歌詞も印象的。ありのままの自分をさらけ出すことの怖さ、そんな恐怖心を抱える人たちに「そのままでいいんだよ」と優しく寄り添う彼の姿勢にどれほどの人が救われただろうか。
「Quiet explosion」
自身もブライアン・ナイトレイダーとして出演するアニメ「THE MARGINAL SERVICE」のOPテーマ。重厚感のあるグルーヴィーなサウンドと宮野のパワフルな歌声が印象的なロックチューン。最初から全力全開なインパクトのある出だしに度肝を抜かれる人も多いかもしれない。1曲の間ずっと絞り上げるようなハイトーンが続く難しい楽曲だが、そのギリギリ感も“心の内に秘めた激しい感情を爆発させる”というこの楽曲のテーマにぴったり。ラスサビで一気にエネルギーが放出されるようなカタルシスもあり、聴いていて実に気持ちがいい楽曲だ。
「Mirror」
様々な“顔”を持つ宮野の未来への決意をダンサブルに歌った、オシャレなアルバムリード曲。この楽曲で最も印象的なのは、やはり曲の半分以上を構成するラップパートで間違いないだろう。頭韻・脚韻などを駆使したリズミカルで小気味の良いライムを、時にカッコよく、時にしゃくりや声の裏返りすらも活用しながら自由な発想で自在にフロウを紡いでいく。宮野のボーカル技術の粋、そして彼の表現の多面性をこの曲以上に味わえる楽曲はないだろう。
改めてアルバム全体を振り返って見ると、現在までに積み上げてきたアーティスト・宮野真守のカッコいいイメージをさらに洗練したような楽曲以外にも、これまでの楽曲とは異なるアプローチで作られた「ジャンプしてみて」「R.P.G」など、アルバム「FACE」というタイトルどおり、多様な音楽を乗りこなす宮野の様々な“顔“がこの1枚で堪能できるようになっている。それは役者として日々表現することに心血を注いでいる宮野だからこそ至れた境地であるのはもちろんのこと、そんな宮野を全面的に信頼して難易度の高い音楽をぶつけてくる制作陣の期待の高さによって生まれた1枚とも言えるだろう。
このアルバムを引っ提げて、アリーナライブツアー「MAMORU MIYANO ASIA LIVE TOUR 2025-2026 ~VACATIONING!~」が今年の11月から12月にかけて宮城、兵庫、神奈川で開催されるほか、2026年には海外公演として上海・台北での開催も決定している。宮野真守のライブ、通称“マモライ”といえば、クオリティの高い歌やダンスパフォーマンスはもちろん、コミカルな幕間映像など、楽しくてハッピーなライブエンターテインメントでお馴染み。今回のアルバムを聴きながら、“マモライ”というバケーションが来る日を楽しみに待っていてほしい。
Information
8thアルバム『FACE』
発売日:2025年11月19日(水)
<初回限定盤(CD+Blu-ray)>

税込¥4,950(税抜¥4,500)
フォトブック封入&スペシャルケース仕様
<通常盤(CD Only)>

税込¥3,630(税抜¥3,300)
【CD】
01 VACATIONING
作詞:宮野真守 作曲・ 編曲:Jin Nakamura
02 The Battle
作詞:sty 作曲:Mitsu.J, sty 編曲:Mitsu.J
03 ジャンプしてみて
作詞:森田和樹 作曲:森田和樹・EFFY 編曲:EFFY
04 Apollo
作詞:ucio 作曲:SiZK、Stephen McNair 編曲:SiZK
05 R.P.G
作詞:SHOW 作曲:Dirty Orange・SHOW 編曲:Dirty Orange
06 Sing a song together
作詞:宮野真守 作曲・編曲:Jin Nakamura
07 Invincible Love
作詞:Amon Hayashi / 作曲:$ÜN(SUN), Le`mon, NAOtheLAIZA/編曲:NAOtheLAIZA
08 Kiss me now
作詞:Noah Cooper / Nozomi Kitay
作曲:GAL D / Noah Cooper / Nozomi Kitay
編曲:GAL D
09 DRESSING
作詞: Malika / Aaron Janoski 作曲・編曲:Jin Nakamura
10 繭
作詞:Lee Minji, Malika, 宮野真守 作曲・編曲:Jin Nakamura
11 零光
作詞・作曲・編曲:APAZZI
12 AUTHENTICA
作詞:宮野真守 作曲・編曲:Jin Nakamura
13 Quiet explosion
作詞・作曲・編曲:sty
14 Mirror
作詞・作曲・編曲:sty
【Blu-ray】
01 Invincible Love Music Video
02 Quiet explosion Music Video
03 Sing a song together Music Video
04 Apollo Music Video
05 The Battle Music Video
06 DRESSING Music Video
07 AUTHENTICA Live Shot Music Clip
08 繭 Lyric video
09 ジャンプしてみて Music Video
10 Mirror Music Video
11 Music Video Making
Quiet explosion
Sing a song together
The Battle
ジャンプしてみて
Mirror
