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【今週の推し曲】西山琳久「おんじい」、港町で育った少年の声が演歌の核心をつかむ

西山琳久「おんじい」

最初の一声で裏切られる。長崎県平戸市出身、現在11歳の西山琳久が放つ歌声は、見た目の愛らしさや微笑ましさとは対極にある。潮の香りと海風を含んだような芯のある声、フレーズの語尾にさしかかるときにこぶしを細かく転がす節回し、そして何より、言葉と言葉の間に感情をそっと滑り込ませるような「間」の取り方──そこにあるのは、年齢とはまったく別の次元で鍛えられた歌心だ。

デビュー曲「おんじい」は、秋元康が作詞し、作曲を後藤康二(ck510)、編曲を猪股義周が手がけた楽曲。演歌の道を歩んでいくことを祖父に向けて誓う内容で、「孫よ 信じるまま おまえの心を歌え」という一節が心臓部に置かれている。

この歌が生まれた経緯を知ると歌詞の重みがさらに増す。琳久が演歌と出会ったのは4歳のとき、祖父の車の中で流れていた「母ちゃんの浜唄(歌唱:福田こうへい)」を聴いて心を撃ち抜かれたことがきっかけだという。釣りを愛し、海と向き合うことで「待つこと」を身体で覚えた少年が、歌において「間」と「情感」を習得したのは、おそらく偶然ではない。「一生懸けて 演歌人生」と歌うとき、そこには幼い少年が覚えた歌詞を口にしているのとは違う、切実な宣誓の響きがある。

サウンドは正統派の演歌だが、聴き進めるとストリングスとエレキギターが絡み合う編曲の中で、琳久の声が不思議な存在感を放っていることに気づく。彼の歌い方は、感情を前面に押し出す「熱唱」とは一線を画す。むしろ曲に身を預け、フレーズが自然に息をするのを待つような落ち着いた佇まいがある。そのくせ、こぶしが入る瞬間だけ別人のように声が変わる。祖父から受け継いだというこの節回しは、大人の演歌歌手でも容易には出せない種類の技だ。

日本テレビ系「歌唱王~全日本歌唱力選手権~」第13回大会では、応募総数12,517件の頂点に立ち、審査委員長の秋元康が自らプロデュースを担当した。韓国の歌番組「日韓トップテンショー」でMVP受賞という実績も、言語を超えて「伝わる歌」を持っていることの証明だろう。それでも、肩書きや数字より先に声が語りかけてくる。

「おんじい」という言葉を繰り返し呼びかけるサビはシンプルゆえに胸に刺さる。遠い海の浜で一人歌う少年が、祖父に向けて声を張り上げる──その光景を思い浮かべたとき、聴く者は演歌というジャンルの本質に触れる。悲しみや願いを、ただまっすぐに歌い上げること。11歳の西山琳久は、それをすでに知っている。

Information

西山琳久『おんじい』

『おんじい』タイプA 『おんじい』タイプB 『おんじい』タイプC
発売日:2026年7月22日(水)
Type A:https://store.kingrecords.co.jp/shop/g/gKICM-2178/
Type B:https://store.kingrecords.co.jp/shop/g/gKICM-2179/
Type C:https://store.kingrecords.co.jp/shop/g/gKIZM-854/
配信:https://nishiyamariku.lnk.to/Onjii

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