『ソイレント・グリーン』 『クルージング』 『バッドランズ』 『殺しの分け前/ポイント・ブランク』 『砂丘』 <緊急集中最終上映>決定 新たに緊急合体予告編も解禁

近年立て続けにリバイバル公開がなされてきた60年代から80年代のハリウッドメジャースタジオ作品、『ソイレント・グリーン』、『クルージング』、『バッドランズ』、『殺しの分け前/ポイント・ブランク』、『砂丘』の5作品の日本国内上映権が終了間際であることが発覚、目黒シネマにて急遽、8月24日(月)、8月27日(木)、8月29日(土)の3日間に<緊急集中最終上映>が決定した。それぞれの3日間すべてで5作品を上映、各日一日で全5作品を一気に鑑賞できるスケジュールとなる。
この5作品は、監督がリチャード・フライシャー、ウィリアム・フリードキン、テレンス・マリック、ジョン・ブアマン、ミケランジェロ・アントニオーニという、字面を見ただけで怯んでしまうほどの映画史にその名を残した凄絶な面々。そんな監督たちのそれぞれのキャリアのなかでも正当作品から異端作までが並ぶ、強烈な作品群であり、初公開時はMGM、ユナイテッドアーティスツ、ワーナー・ブラザースなどのハリウッドメジャーが配給、インディペンデント映画配給会社が軽々しく扱うことのできない圧巻の作品だ。すべてに共通するのは≪アメリカ映画≫であるということ。そして観客に媚びた映画や、金儲け最優先に作られたスタジオ主導の製品的映画とは最も距離のあるアメリカン・ニューシネマの始まりと終わりを網羅した5作品でもある。
時系列に追う。
『殺しの分け前/ポイント・ブランク』(67)は後に『脱出』(72)『未来惑星ザルドス』(74)など、映画史上の傑作、異色作を発表する英国の巨匠ジョン・ブアマンが時空間を断片化し、鮮烈な色彩表現とともに夢と記憶と幻想を交錯させ、ハリウッド映画の表現規範を破壊したハリウッドデビュー作にしてハードボイルド最高傑作。マーティン・スコセッシ、スティーヴン・ソダーバーグ、クリストファー・ノーランほか、錚々たるクリエイターたちから圧倒的支持を受ける一作。一般的にアメリカン・ニューシネマの始まりと云われる『俺たちに明日はない』(67)の公開からわずか2週間遅れで全米公開された本作は、それまでのアメリカ映画には一切見当たらない表現で度肝を抜いたニューシネマの起点といっても過言ではない衝撃作だ。
『砂丘』(70)は1960 年代、世界三大映画祭を制したイタリアの巨匠ミケランジェロ・アントニオーニが大国アメリカの過去と現在を幻視した壮大な黙示録。アントニオーニ初のアメリカ映画であり、メジャースタジオMGMから莫⼤な予算を得て、全世界注視の下に完成させた超大作であり、〈異邦⼈が視たアメリカ〉の先駆けとなった重要作。自由を描いたアメリカン・ニューシネマの代表格『イージー★ライダー』(69)がアメリカの神話を作ったとするならば、同じく自由を扱った『砂丘』はその神話を解体した作品だ。暴走する⽂明の極致としてのアメリカを幻視したアントニオーニの視線は、今なお変わらぬ鋭さでディストピアと化した現在のアメリカの姿をも予⾒していたといえるだろう。
『ソイレント・グリーン』(73)は『ミクロの決死圏』(66)、『絞殺魔』(68)、『トラ・トラ・トラ!』(70)など犯罪劇からサスペンス、ホラーにコメディまで幅広いジャンルで活躍した娯楽の名匠であり特に視覚効果を駆使したSF大作はその独壇場といえるリチャード・フライシャー監督がSF作家ハリイ・ハリスンの問題小説「人間がいっぱい」を映画化。人口爆発、環境破壊、食糧難、格差社会で地球が超限界を超えてしまった状況を描く未来予想図。その50年後の今、まったくもって映画のとおりの世の中となっていることを我々は知り、50年前から人類に警鐘を鳴らし続けたこの映画について受け止めることができなかった愚かさに落胆し絶望する。
『バッドランズ』(73)は、後の『天国の日々』(78)と『シン・レッド・ライン』(98)によって巨匠の地位を確立し、『ツリー・オブ・ライフ』(11)でカンヌ映画祭パルム・ドールを受賞したテレンス・マリックの監督デビュー作。1950年代末アメリカ、ネブラスカ州とワイオミング州で約2ヶ⽉間に11⼈もが殺害された連続殺⼈事件、罪を重ねながら逃避行を続けた犯⼈のチャールズ・スタークウェザーとその恋⼈キャリル・アン・フューゲートの姿を美しくも残酷に描き切った、アメリカ映画最重要作ともいわれる一作。日本では昨年、製作から半世紀以上を経て初めて劇場公開されたばかり。『トゥルー・ロマンス』(93)のトニー・スコット、『スリー・ビルボード』(17)のマーティン・マクドナー、『ムーンライズ・キングダム』(12)のウェス・アンダーソン、『リバー・オブ・グラス』(94)のケリー・ライカート、『アンダートウ 決死の逃亡』(04)のデヴィッド・ゴードン・グリーン、『セインツ−約束の果て−』(13)のデヴィッド・ロウリーら多くの映画監督たちの憧れであり続ける傑作中の傑作だ。
そして1980年の『クルージング』。『フレンチ・コネクション』(71)でアカデミー賞・作品賞と監督賞を受賞、続く『エクソシスト』(73)の世界的ヒットでオカルト・ブームを巻き起こし、いまや傑作と讃えられている『恐怖の報酬』(77)を放った巨匠ウィリアム・フリードキンが、想像を絶するSMクラブ内の狂態を脚本に盛り込み、NYアンダーグラウンドのゲイ・カルチャーを背景にした実際の連続殺人事件に斬り込んだ、かつてないクライム・サスペンス。後の『羊たちの沈黙』(91)や『セブン』(95)などに先駆けたサイコ・サスペンスの重要作であるだけでなく、SMゲイ・カルチャーの洗礼を受けて揺らぐ男の性的アイデンティティと精神の闇に迫った、今なお先鋭的な野心作だ。そのあまりの野心作具合に世の中はパニックに陥ったが、アメリカン・ニューシネマ時代の映画作家たちが勢いを失い始めたのもまさにこの年。完全崩壊に至るのは翌年の1981年、マイケル・チミノ監督『天国の門』の惨劇でのことだ。
『ソイレント・グリーン』の絶望、『クルージング』のどす黒さ、『バッドランズ』の荒地、『殺しの分け前/ポイント・ブランク』の妄執、そして『砂丘』の不毛加減。すべて大国アメリカの闇を抉り出す監督たちの並々ならぬ覚悟が刻まれた真剣勝負の映画たちだ。観客に媚び、過剰なサービスを観る者に浴びせ続け、もはや作り手の意思は吹き飛び、作業をこなして作られた金儲けのための<製品>としての機能しか持たない映画とは1ミリも相容れない本物の<作品>であるこの5作品を劇場鑑賞できる最後のチャンス。消費されるだけの娯楽で麻痺した状態から、本物の感性を取り戻す絶好の上映となるだろう。
Information
上映作品
『ソイレント・グリーン《デジタル・リマスター版》』

出演:チャールトン・ヘストン、リー・テイラー・ヤング、エドワード・G・ロビンソン、ジョセフ・コットン、チャック・コナーズ
監督:リチャード・フライシャー 原作:ハリイ・ハリスン「人間がいっぱい」
製作:ウォルター・セルツァー、ラッセル・サッチャー
音楽:フレッド・マイロー
1973年|アメリカ映画|97分|DCP|原題:SOYLENT GREEN
(C) 2024 WBEI
『クルージング』

出演アル・パチーノ ポール・ソルヴィーノ カレン・アレン
脚本・監督ウィリアム・フリードキン 製作ジェリー・ワイントローブ 原作ジェラルド・ウォーカー 音楽ジャック・ニッチェ
1980年|アメリカ映画|102分|DCP|原題:WILLIAM FRIEDKIN‘S CRUISING
(C) 2024 WBEI
『バッドランズ』

出演:マーティン・シーン シシー・スペイセク ウォーレン・オーツ ラモン・ビエリ
脚本・製作・監督:テレンス・マリック 製作総指揮:エドワード・R・プレスマン
撮影:ブライアン・プロビン、タク・フジモト、ステヴァン・ラーナー 美術監督:ジャック・フィスク
1973年|アメリカ映画|94分|DCP|原題:BADLANDS
(C) 2025 WBEI
『殺しの分け前/ポイント・ブランク』

出演:リー・マーヴィンアンジー・ディキンソン ジョン・ヴァーノン シャロン・アッカー キーナン・ウィン
監督:ジョン・ブアマン製作:ジャド・バーナード ロバート・チャートフ
脚本:アレクサンダー・ジェイコブス、デイヴィッド・ニューハウス、レイフ・ニューハウス
原作「悪党パーカー/人狩り」by リチャード・スターク 撮影監督:フィリップ・H・ラスロップ
1967年|アメリカ映画|92分|DCP|原題:POINT BLANK
(C) 2025 WBEI
『砂丘』

出演 マーク・フレチェット ダリア・ハルプリン ロッド・テイラー
監督・脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ 製作:カルロ・ポンティ 脚本:フレッド・ガードナー サム・シェパード トニーノ・グエッラ クレア・ペプロー
撮影監督:アルフィオ・コンティーニ 美術デザイン:ディーン・タヴォラリス 編集協力:フランコ・アルカッリ
1970年|アメリカ映画|113分|DCP|原題:MICHELANGELO ANTONIONI’S ZABRISKIE POINT
© 2026 WBEI
<上映スケジュール>
『ソイレント・グリーン』
8/24(月)9:30
8/27(木)16:30
8/29(土)11:15
『クルージング』
8/24(月)13:10
8/27(木)9:30
8/29(土)21:05
『バッドランズ』
8/24(月)21:15
8/27(木)10:55
8/29(土)13:05
『殺しの分け前/ポイント・ブランク』
8/24(月)11:20
8/27(木)14:45
8/29(土)9:30
『砂丘』
8/24(月)19:10
8/27(木)12:40
8/29(土)16:50
