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市川由紀乃、最新曲「石狩ルーラン十六番地」やカバー曲、デュエットなど全19曲披露 デビュー30周年記念リサイタル『ソノサキノユキノ』レポート

 歌手の市川由紀乃が9月7日、東京・LINE CUBE SHIBUYAでデビュー30周年記念リサイタル『ソノサキノユキノ』を開催。最新楽曲「石狩ルーラン十六番地」をはじめ、ピーターや井上陽水のカバーなどを披露した他、吉本新喜劇の川畑泰史がサプライズ登場し「運命と呼ばせて」をデュエットするなど全19曲を披露。30年を振り返りながら、多彩な選曲と演出で、まさしく“その先”を見せてくれた。

 裃(かみしも)姿で、ステージに正座して登場した市川。「本日はかくも賑々しくご来場賜り厚く御礼申し上げます。30年目を迎えさせていただきました。ご存じの通り決して平坦な道のりではありませんでしたが、皆様と一緒に“命咲かせて”“心かさねて”、ここまで歩んで参りました。これからも市川由紀乃を温かく見守ってくださるよう、隅から隅までずずずいっと御願い奉ります」。2016年の『第67回NHK紅白歌合戦』に初出場した時に歌唱した「心かさねて」など自身の楽曲になぞらえた口上に、会場は割れんばかりの拍手で包まれた。

 ライブは5つのパートに分けて展開。第一景は、股旅ものの「月の渡り鳥」で三度笠を掲げるポーズを決めたほか、「命咲かせて」は「是非、“由紀乃”と心でかけ声をかけてください」と伝えて歌い、楽曲のリズムに合わせて会場には赤いペンライトが揺れた。

 第二景は『【月下夜想】~中国の風に乗せて~』と題し、ピーターの「夜と朝のあいだに」や、霧島昇の「胸の振子」などをカバー。チャイナ調のセクシーなドレスを身にまとい、クラブの歌姫に扮してムーディーに歌い上げた市川。(そのドレスはピーターからプレゼントされたもの)「夜と朝のあいだに」は、ピアノとボーカルだけのアレンジとボッサのアレンジの2パターンを披露、山口淑子の「夜来香」は、扇子をひらひらさせながら色気たっぷりに聴かせた。そんな市川に惚れたいかした紳士(花柳一)も登場し、2人でダンスを繰り広げるシーンも。最後に紳士が花束を渡すも、盛大にフラれるというオチで会場を盛り上げた。

 幕間には、歌謡界で繫がりのある人物からのメッセージや企画映像で集まったファンを楽しませた。三山ひろしがニュースキャスターに扮した映像が流れると、会場には思わず笑いがこぼれる。市川とは“ゆっきーの”“ひろ”と呼び合う仲の良さだそう。軽快なトークで市川の30周年を祝い、「生涯通して応援したい」と、市川を推し続けることを宣言。また、『うた恋!音楽会』(BS-TBS)など音楽番組でも共演、市川が先輩と慕う由紀さおりは、「私の後に続いて、長く良い歌を歌い続けてほしい」と、お祝いメッセージを贈った。

 第三景は、『市川由紀乃×男の歌世界』と題し、男性ボーカル曲のカバーを披露。ここでは、梅沢富美男の「夢芝居」や内山田洋とクール・ファイブの「東京砂漠」、井上陽水の「心もよう」といった昭和の名曲が歌われ、演歌とはまたひと味違った彼女の歌声が、観客を魅了。白の力強くもエレガントな雰囲気を醸し出したスーツ風の衣装が、長身の市川をより輝かせていた。

 その後、軽快なサウンドと共にサポートバンド“スノー・クリスタル・バンド”のメンバーが紹介された。「からあげ大好き」「趣味は寝ること」など、市川によるひと言メモもユーモアたっぷり。バンドメンバーと市川の信頼関係が感じられた。

 第四景『【花宵或夜】~叶わぬ恋の歌語り~』では、真っ赤な姿で、遊女に扮した市川。「秘桜」や「雪恋華」などを切なく歌い上げたほか、「女ってバカよね」というセリフなど一人語りでも魅せ、最後には大量の紙吹雪が舞い散る中で自害しようとするシーンが演じられ、迫真の演技に拍手喝采が贈られた。

 そして最終章となる第五景は、様々な趣向で観客を楽しませた。8月24日にリリースされたばかりの「石狩ルーラン十六番地」は、画家の三岸好太郎・節子夫妻の絵画をスクリーンに映し出して歌唱。同曲を作詞した作詞家・吉田旺は、三岸夫妻の絵画に感銘を受けて作詞をしたとのこと。同曲のMVが、実際に三岸夫妻が使っていたアトリエで撮られたことも明かされ、これまでの演歌とはひと味違った世界観で、新たな歌の境地に観客もステージに釘付けとなった。

 MCでは、「16歳の時に事務所の社長と出会わなければ、今の私はいなかった。無駄な経験は一つもない」と30年の歩みを振り返った。壁にぶつかった時は、由紀さおりが相談に乗ってくれ、三山ひろしなど素敵な仲間の存在が刺激になったとも話す。また約4年半の活動休止もあり、復帰となった「海峡出船」の作曲を手がけた、師匠である故・市川昭介への感謝を、目を潤ませて語る場面もあった。

 しんみりとした空気の中、吉本新喜劇の川畑泰史座長がサプライズ登場すると会場は一気に明るく和らいだ。本人にもサプライズだったため、「バレないようにヒヤヒヤだった」と語る川畑と歌ったのは、「都わすれ」のカップリング曲「運命と呼ばせて」。手を合わせて回る振り付けと共に歌い上げると、「すごく幸せです。秋に大阪に行きますね!」と手を振って川畑を見送った。そして、「皆さん、由紀乃のこの手、離しちゃ嫌ですよ!」と歌詞になぞらえたひと言に続けて「都わすれ」を。ラストには、「サラブレッドじゃないじゃじゃ馬だけど、皆さんの笑顔をゴールに、これからも走り続けていきます。これからも側に居続けてください」とコメントして、「あなたがそばに」を歌い上げると、市川の30周年を祝う銀テープがキャノン砲から発射された。

 入場の際、観客にはカットされた銀テープが配布され、観客はそれを振りながら市川を応援した。これは、元々一繋がりだったテープをカットしてみんなでシェアし、最後に一緒に振って盛り上がることで、“みんな繋がっているんだよ”というメッセージを表現したとのこと。市川の心づくしに、銀テープを握りしめるファンの表情からも、笑顔がこぼれ落ちていた。

取材・文=榑林史章
写真=堀内彩香

「市川由紀乃リサイタル2022 ソノサキノユキノ」2022年9月7日 東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)セットリスト

第一景
01. 月の渡り鳥
02. 流氷波止場
03. はぐれ花
04. 命咲かせて

第二景「月下夜想」~中国の風に乗せて~
05. 夜と朝のあいだに(ピーター カバー)
06. 夜来香(山口淑子 カバー)
07. 胸の振子(霧島昇 カバー)
08. 夜と朝のあいだに(ピーター カバー)

第三景 市川由紀乃×男の歌世界
09. 夢芝居(梅沢富美男 カバー)
10. 東京砂漠(内山田洋とクール・ファイブ カバー)
11. 心もよう(井上陽水 カバー)

第四景「花宵或夜」~叶わぬ恋の歌語り~
12. 秘桜
13. 横笛物語
14. 雪恋華

第五景
15. 石狩ルーラン十六番地
16. 海峡出船
17. 運命と呼ばせて(with 川畑泰史)
18. 都わすれ
19. あなたがそばに

市川由紀乃 オフィシャルサイト

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