【ベルウッド・レコード50周年】 PICK UP LIBRARY 第4回

ベルウッド・レコード設立50周年を記念して本日より、初期の名盤アルバムがダウンロード/サブスクリプション/ハイレゾにて配信開始!
ベルウッド・レコード往年のファンはもちろん、配信で初めて耳にする方にもまずはこれを聴いて欲しい、必聴タイトルをピックアップしてキングレコードスタッフがご紹介していきます。

▶はっぴいえんど「HAPPY END」

1973年に発売されたはっぴいえんど3枚目のスタジオ・アルバムにして、はっぴいえんどのベルウッド・レコード第1弾作品である。

1972年、すでに年内で解散をする意向が固まっていた彼らに、ベルウッド・レコード創設者の三浦光紀からロサンゼルスで録音をしないかという話が持ちかけられた。
解散が既に決まっている状況ではあったが、最終的には全員が承諾しロサンゼルスに向かうこととなった。

録音はハリウッドにある「サンセット・サウンド・レコーダーズ」というスタジオで行われた。このスタジオは伝説的な名盤の数々が録音されたスタジオであり、はっぴいえんど結成のきっかけともなった1曲、バッファロー・スプリングフィールドの「ブルー・バード」もここで録音されている。

ロサンゼルスで録音されたサウンドは、アルバム1曲目の「風来坊」から早速、これまでの作品との違いを感じさせる。音の立体感やカラッとしたサウンドなど音質的な面での違いも顕著だが、カービー・ジョンソンによるホーン・アレンジやコーラスを聴かせるような展開、そして飄々と歌う細野のボーカルが心地よい語感でそこに寄り添うことで、心地よく新鮮なナンバーとなっている。

それまでは大瀧と細野が作曲を分け合う形をとっていたはっぴいえんどだが、大瀧が直前までソロ作品を制作していたことから、本作では大瀧作曲は2曲に留まり、前作で作曲デビューを果たした鈴木が3曲を作曲している。中でも「氷雨月のスケッチ」は、作曲のみならず鈴木のボーカリスト/ギタリストとしての魅力も前面に出た作品であり、その後のソロアーティストとしての活動の片鱗を覗かせている。

アルバムの最後を飾る「さよならアメリカ さよならニッポン」は、ヴァン・ダイク・パークスによる曲を日本語の歌詞で歌い上げた1曲。効果的に使用されたフェーズ・シフターによる不鮮明さが聴く者の想像を膨らませ、「さよなら」という別れの言葉をより一層印象付ける。

「HAPPY END」ははっぴいえんどが残した最後のスタジオ・アルバムとなったが、結成のきっかけとなったバッファロー・スプリングフィールドと同様、メンバーそれぞれによる楽曲に4人のアーティスト性が存分に発揮されており、彼らのルーツに最も近づいたアルバムともいえるだろう。

〇オリジナルリリース:OFL-8(1973年リリース)

<参加ミュージシャン>
はっぴいえんど(細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂)
Kirby Johnson、Van Dyke Parks、Tom Scott、Billy Payne、Dave Duke、Slyde Hyde、Chuck Findley、Lowell George

◆再生はこちらから
https://king-records.lnk.to/HAPPYEND

▶大瀧詠一「大瀧詠一」

はっぴいえんど在籍中であった1972年に発売された大瀧詠一による初のソロ作品。

後にラジオ番組「GO!GO! NIAGARA」でオールディーズや歌謡曲等に関する豊富な知識が披露されることとなるが、ソロ1作目の本作でも、その膨大な知識に基づいて様々な楽曲の要素を取り入れた、オリジナリティあふれる楽曲を堪能することができる。
メロディーラインや歌唱法もさることながら、はっぴいえんどのメンバーを中心としたバッキングの表現も巧みで、背景にある”元ネタ”を彷彿とさせる。
またアルバムタイトル「大瀧詠一」も、大瀧のルーツの一つであるエルヴィス・プレスリーの1stアルバム「エルヴィス・プレスリー」を基にしたものである。

大瀧には珍しいR&B風なキレのあるボーカルを始め、聴きどころ満載なファンクナンバー「びんぼう」は、「Niagara Moon」以降にも繋がるノベルティーソング。「ウララカ」は、フィル・スペクターへのリスペクトを込めたサウンドに仕上げている。

ソロ1作目でありながらナイアガラ・サウンドへと続く大瀧作品のスタイルが確立されており、一方で初期ならではの味わいも感じさせる本作。サウンドと調和した大瀧自身によるユニークな歌詞も魅力的だが、松本隆の抒情的な歌詞と大瀧の伸びやかな歌声が生み出す響きには、特に心を奪われる。この時期の大瀧の歌声だからこその表現が詰まっており、それが顕著に現れた「乱れ髪」は必聴だ。

大瀧作品やナイアガラ・サウンドの導入としては勿論、楽曲の下地となっているアメリカン・ポップスやファンクといったジャンルの入り口としても聴いておきたい名盤だ。

〇オリジナルリリース:OFL-7(1972年リリース)


<参加ミュージシャン>
大瀧詠一
駒沢裕城、池田光夫、松本隆、細野晴臣、吉田美奈子、シンガーズ・スリー、鈴木茂、布谷文夫、野地義行、松任谷正隆、鈴木慶一、林立夫、原田政長、ジミー竹内、佐野博美、福島照之 ほか

◆再生はこちらから
https://king-records.lnk.to/OhtakiEiichi

▶細野晴臣「HOSONO HOUSE」

はっぴいえんど解散後の1973年に発売された細野晴臣の1stソロ・アルバム。

はっぴいえんどの解散が決まっていたこともあり、「HAPPY END」制作前から構想があったという作品。「HAPPY END」に収録されている「相合傘」は、もともとこのアルバムのために作られた楽曲であった。そのため本作の最後に収録されている「相合傘」は、デモテイクのイントロのみが収録されたものとなっている。

本作はタイトル通り、埼玉県狭山市の通称アメリカ村にあった細野の自宅にて録音されており、16トラックのミキシング・コンソールなどの録音機材が持ち込まれたという。現在は手軽に宅録ができるようになったが、当時の日本でこのように住居でレコーディングするということはかなり稀であった。(アメリカでは当時からザ・バンド「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」やジェームス・テイラー「ワン・マン・ドッグ」などの例があった)

バックはキャラメル・ママのメンバーとなる松任谷正隆、鈴木茂、林立夫に加えて、スチール・ギターの駒沢裕城と豪華なメンバーが参加しているが、さらに本作で外せないキーマンの一人が、エンジニアの吉野金次である。
はっぴいえんど時代から制作を共にしており、本作からフリーランスのエンジニアとなった吉野であるが、スタジオとは違った環境の中で唯一無二のサウンドを作り上げた立役者と言えるだろう。
1曲目に収録されている「ろっかばいまいべいびい」は、アコースティックギターとベースによるアメリカンな雰囲気をまとった弾き語りであるが、ここでは程よい脱力感のある細野のボーカルが、自宅で録音した作品ならではの味わいを醸し出している。

アルバムを代表する1曲「恋は桃色」は、スチール・ギターなどによるカントリー色を感じるラブソングなのだが、「風をあつめて」に通ずる空気感もあり、はっぴいえんどの延長線上にある楽曲とも感じ取れる。一方、それとは対照的なのが「薔薇と野獣」だ。16ビートのファンクなナンバーは、本作の印象をガラリと変えると共に、キャラメル・ママのアーティスト性、演奏スタイルを強く印象付ける1曲。時代の変化と共にこの「薔薇と野獣」も本作の顔になりつつある。

その後活動の幅を広げ様々な音楽を表現していく細野の、初のソロ作品に収められた独特なサウンドと高い音楽性は、今もなお時代や国境を超えて多くの支持を集めている。

〇オリジナルリリース:OFL-10(1973年リリース)

<参加ミュージシャン>
細野晴臣
松任谷正隆、鈴木茂、林立夫、駒沢裕城

◆再生はこちらから
https://king-records.lnk.to/HOSONOHOUSE

▶はっぴいえんど「ライブ!!はっぴいえんど」

1973年9月21日に東京・文教公会堂にて開催された解散記念コンサート「CITY-Last Time Around-」の模様を収録した実況録音盤であり、はっぴいえんど唯一のオリジナル・ライブアルバムである。

1972年末をもって実質的には解散していたはっぴいえんどだが、その後の4人の活動や関わりを持つアーティストをお披露目する目的もあり、解散コンサートが開催された。
コンサートは3部構成で、南佳孝、吉田美奈子、西岡恭蔵、ココナツ・バンク、ムーンライダース、キャラメル・ママ、さらにはシュガー・ベイブと、錚々たるメンバーが出演しており、本作は披露された楽曲の一部を曲順を含め再編成し構成されている。

アルバム1曲目は、「はいからはくち」から幕を開ける。
「はいからはくち」は、アルバム「風街ろまん」とキングレコードから発売されたシングルに加え、ライブ用のアレンジも存在していたのだが、このコンサートではそれらと全く異なるワウギターや複雑なリズムが織りなすファンクなアレンジで披露された。
同じ曲でもシングルとアルバムでアレンジを変えて収録していた、はっぴいえんどの演奏に対するこだわりが垣間見えるエピソードである。このライブアルバムには当時のはっぴいえんどにとって最新の演奏が収められたといって良いだろう。

さらにはっぴいえんど以外では、当時話題を呼んでいたCMソングの「サイダー‘73」を含む大瀧詠一とココナツ・バンクによるメドレーと、西岡恭蔵によるパフォーマンス2曲をこのアルバムで聴くことができる。

アルバムの最後にはアンコールの模様が収録されており、大瀧による『この4人でないとできない曲をやります』といった挨拶に続く形で「かくれんぼ」、「春よ来い」の演奏が収められている。本作のジャケット帯下に掲載された松本隆によるライナーノーツ「はやすぎた回想録」では、この日に披露した「春よ来い」に関して、『今までいちばんいい出来だったと思う』と記されている。そんな演奏をもって、はっぴいえんどはその活動に本格的に終止符を打った。

はっぴいえんどの集大成としてだけでなく、メンバーの新たな船出とその後の活躍を予期させるステージが鮮明に記録された一作である。

〇オリジナルリリース:OFL-20(1974年リリース)

<参加ミュージシャン>
はっぴいえんど(大瀧詠一、鈴木茂、、細野晴臣、松本隆、鈴木慶一)
西岡恭蔵(西岡恭蔵、武川雅寛、駒沢裕城、岡田徹、松田幸一、田中章弘、林敏明)
大瀧詠一とココナツ・バンク(大瀧詠一、伊藤銀次、駒沢裕城、藤本雄志、上原裕、シュガー・ベイブ、シンガーズ・スリー)

◆再生はこちらから
http://king-records.lnk.to/LiveHAPPYEND

▶西岡恭蔵「街行き村行き」

ザ・ディランでの活動を経て、1972年にベルウッド・レコードからアルバム「ディランにて」でソロ・デビューをした西岡の2ndアルバム。

1974年に発売された本作は、はっぴいえんど解散直後の細野晴臣をプロデューサーに迎えて制作され、ジャケットに書かれた「Kyozo with Hosono」という文字やブックレットに掲載された西岡と細野がソファに腰掛けた写真から、親密な距離感での共同作業を経て完成したアルバムであることが伺える。

はちみつぱいのかしぶち哲郎、岡田徹、武川雅寛、駒沢裕城らがバッキングを務め、ポップなアコースティック・サウンドでありながら、メロウな空気感が漂っている。そのサウンドにのせてうっすらリバーブが掛かった西岡の歌声で何気ない情景が歌われることで、歌詞の中の素朴な日常が、まるでアニメーションや映画の様なファンタジックな世界観に昇華されていくように聴こえる。
そんな本作には、インストのみの「どぶろく源さん」という曲が収録されており、こちらには鈴木茂が参加している。パワフルな村岡建のサックス、武川の軽快なフィドルに、鈴木によるクリーントーンのスライド・ギターが加わったハーモニーは上質なカントリー・ロックに仕上がっている。

春一番コンサートのテーマ曲となった「春一番」を始め、西岡のアーティスト性と細野のプロデュースの掛け合わせが生んだ名曲揃いの名盤だ。

〇オリジナルリリース:OFL-21(1974年リリース)

<参加ミュージシャン>
西岡恭蔵、細野晴臣
かしぶち哲郎、岡田徹、武川雅寛、駒沢裕城、鈴木茂、村岡建、松本裕、松田幸一

◆再生はこちら
https://king-records.lnk.to/MachiMura

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