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MAY’S、CLIFF EDGEなど『着うた』のヒット曲が YouTubeで100万回再生を超え今も視聴され続けている理由 ~音楽ルーツを深堀り!Vol.1~

R&BやHIP-HOPなどのダンスミュージックを主に扱い、MAY’S、CLIFF EDGE などのアーティストを輩出したレーベル『Venus-B』(ヴィーナスビー)。2000年代中盤から後半にかけてリリースされたVenus-Bの楽曲の多くが、現在YouTubeの再生回数で100万回以上、なかには1000万回を超える楽曲もあるほか、TikTokでも高い支持を獲得していることをご存じだろうか。
今なお『Venus-B』作品が根強く支持され続けている理由を、その背景を振り返りながら考察していく。

ケータイから流れる『着うた』『着うたフル』のヒットとは何だったのか

時代をさかのぼること1999年2月、NTTドコモの携帯電話サービス『iモード』がスタートした。このサービスで人気コンテンツとなったのが、携帯電話の着信音をメロディとして鳴らすことができる『着信メロディ』機能だ。
2000年代前半の全盛期には月額会員の登録者が300万人を超えるコンテンツプロバイダが存在したほど、急速に拡大した通称『着メロ』。このサービスのヒットをきっかけに、以後、次々と派生コンテンツが生み出されていく。2002年にはau、2003年にはVodafone(現ソフトバンク)、2004年にはNTTドコモが、本物の音源から切り出したサビの30〜45秒を着信音にできる『着うた』サービスをスタートさせ、さらに2004年11月にauから40MBの内蔵メモリを搭載した携帯電話が発売されると、フルサイズの楽曲をダウンロードができる『着うたフル』のサービスが始まった。
『着信メロディ』は単音~128音程度で作られる“音楽風”なメロディーであるためデータ容量も軽く、月額課金100円で3曲ダウンロードできたのに対し、『着うた』は曲のデータ容量が『着信メロディ』の倍以上で、100円で1曲のみダウンロードすることが可能だった。また『着うたフル』は1曲300円以上で販売されたものの、アーティストの歌声が流れる一番の聴かせどころを着信音にできることや、好きなアーティストの楽曲をいつでも簡単に聴くことができる手軽さと便利さがウケて、音楽を聴くための新しい文化として寝付いていった。
『Venus-B』からリリースされた楽曲も、この時代の波に乗ってダウンロード数を伸ばしていった。ここからは『Venus-B』で最もヒットしたMAY’Sの「I LOVE YOU が言えなくて」をピックアップし、さらに具体的にダウンロード数を伸ばした理由を深掘りしていく。

再生回数1000万回越えのMAY’S「I LOVE YOU が言えなくて」

プロデューサーで作曲・プログラミングも担当している河井純一と、作詞・ボーカル担当の片桐舞子のユニット、MAY’S。互いに5月(英語で「MAY」)生まれという共通点からユニット名を決めた2人が、2009年8月19日にシングルとしてリリースしたのが「I LOVE YOU が言えなくて」だ。この曲は『着うた』でダウンロード数を伸ばした後、1曲をフルで聴くことができる『着うたフル』のサービスがスタートすると、配信サイト「レコチョク」のデイリーランキングで1位を獲得したほか、深夜のバラエティ番組『ランク王国』(TBS系)のオープニングテーマに選ばれるなど、MAY’Sを語る上で欠かせない曲の1つとなった。
当時「I LOVE YOU が言えなくて」の『着うた』は、「イントロ」「1番のサビ」「2番のサビ」、2番のサビあとの「大サビ」、1番のサビが転調しドラマティックな展開を魅せる「ラストサビ」と、5か所の切り出しが用意されていた。
「『I LOVE YOU』さえ言えずにいる 苦しいだけの恋じゃ嫌だよ」と自分の気持ちを伝えられないもどかしさを歌った「1番のサビ」に、「『I LOVE YOU』まだ言えないけど いつかあなたに伝えたいから」ともどかしさと決意を歌った「2番のサビ」や、「雨宿りしたあの夕暮れは まるで映画の1シーンみたいで抱きしめてほしかったよ」とリアリティのある情景からスタートする「大サビ」など、リスナーは片想いの切ない心情を等身大に描いたこの曲の好きな箇所を、その時の気分によって選択することができたのだ。
そして、この曲の人気は時代を経てさらなる展開を見せる。板野友美も出演したミュージックビデオの再生回数は今日(2023年3月)現在で1159万回を越え、コメント欄には「ホントたまに聴きたくなり再生してしまいます」「何回この歌聴いて泣いたかな…」というコメントが多く寄せられるなど、リリースから14年経った今でも色褪せず、くり返し再生され再生回数を伸ばし続けているのだ。

『Venus-B』楽曲は、なぜ今も愛され続けているのか

『着うた』、『着うたフル』の時代に制作された『Venus-B』の楽曲には、ミュージックビデオの再生回数が100万回以上を越えるものが他にも数多く存在する。
では、なぜ『Venus-B』の動画コンテンツが現在も根強い人気を保ち続けているのか。その理由は、今人気の「ショート動画サービス」との高い親和性にあると推測される。
例えばTikTokで『Venus-B』と検索すると、投稿者が楽曲の一番の聴かせたい部分を切り出し、15秒から30秒程度の長さにしたショート動画が多数ヒットする。これらの短尺の投稿動画は、先に触れた“音楽のイイところを厳選して楽しむ” 『着うた』の文化と、非常に酷似していないだろうか。
実際にTikTokで「MAY’S『I LOVE YOU が言えなくて』」と検索し、その後、どのような動画が表示されるのかを検証してみた。
すると「I LOVE YOU が言えなくて」を使う動画を表示した後にも『Venus-B』の他の楽曲を使った動画が連続でレコメンドされ、その後もMAY’Sの「ONE LOVE ~100万回のKISSでアイシテル~」、そしてMAY’SがフィーチャリングしたKGの「きっと、ずっと」などを使用した動画が次々に表示された。
これは『Venus-B』レーベルに属する楽曲が類似の楽曲と判定され、レコメンドが強く作用していることを意味する。このレコメンドシステムが海外も含めると10億人近くとされているTikTokユーザーに「もっと曲を長く聴きたい」と想起させ、結果それがYouTubeの再生回数増に繋がっていると考えても不思議ではないだろう。

2023年2月にはYouTubeのショート動画サービス「YouTube Shorts」の収益化が開始となり、TikTokとしのぎを削る“ショート動画戦国時代”に突入したといわれている。このタイミングで、『着うた』というショートコンテンツの全盛期に制作された『Venus-B』に注目が集まっているのは、“リスナーへの想いがこもった楽曲が時代を越えて支持されること”を証明したともいえるだろう。

今回紹介した楽曲のほか、時代を越えて愛される『Venus-B』のヒット曲をプレイリストとしてまとめた。『着うた』、『着うたフル』をダウンロードしたことがある方はもちろん、TikTokにピッタリな曲を探している方にもオススメの曲を、この機会にお楽しみいただきたい。


■プレイリスト『今なお輝きを放つ「Venus-B」バズりソング』
URL:https://lnk.to/Venus-B_BUZZ

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