【ベルウッド・レコード50周年】 PICK UP LIBRARY 第3回
ベルウッド・レコード設立50周年を記念して2022年秋、初期の名盤アルバムがダウンロード/サブスクリプション/ハイレゾにて配信開始!
ベルウッド・レコード往年のファンはもちろん、配信で初めて耳にする方にもまずはこれを聴いて欲しい、必聴タイトルをピックアップしてキングレコードスタッフがご紹介していきます。
▶あがた森魚+蜂蜜ぱい「赤色エレジー」
1972年4月25日に発売されたベルウッド・レコード第1弾シングルであり、あがた森魚のメジャーデビュー作。
この自主制作盤が発売された1971年、あがたは全日本フォークジャンボリーにてサブ・ステージに出演しており、このステージを録音したテープがきっかけでベルウッド・レコード創設者の三浦光紀があがた森魚を見出すこととなり、本作の発売に繋がった。
このシングル盤に収録された「赤色エレジー」は二度のレコーディングを経て完成し、哀愁を帯びたメロディーにのせてむせび泣く様に歌唱するあがたの歌声、物語の様に展開していく蜂蜜ぱいのノスタルジックなサウンドが、時間にして約4分で聴く者を虜にする世界観を確立している。
また林静一による色彩豊かなジャケットデザインも、作品をより印象付けるものとなった。
このシングル盤に収録された「赤色エレジー」は二度のレコーディングを経て完成し、哀愁を帯びたメロディーにのせてむせび泣く様に歌唱するあがたの歌声、物語の様に展開していく蜂蜜ぱいのノスタルジックなサウンドが、時間にして約4分で聴く者を虜にする世界観を確立している。
また、色彩豊かで印象的なジャケットデザインは林静一によるものである。
こうして発売された「赤色エレジー」は、ジーンズに下駄を履いたスタイルでのTV演奏も話題を呼び、ベルウッド・レコード第1弾にして大ヒットを記録することとなる。
このヒットが新興レーベルであった”ベルウッド・レコード”の名を世に知らしめるきっかけにもなり、ベルウッド・レコードを語る上では欠かすことができない、記念碑的な作品となっている。
〇オリジナルリリース:OF-1(1972年リリース)
<参加ミュージシャン>
あがた森魚+蜂蜜ぱい(渡辺勝、鈴木慶一、和田博美、本田信介、武川雅寛、カシブチ哲郎)
◆再生はこちら
https://king-records.lnk.to/sekisyokuelegy
▶友部正人「一本道」
「赤色エレジー」と同時に発売された友部正人の1stシングル。
このシングルに収録された「一本道」「まちは裸ですわりこんでいる」は、レコードのみならずラジオオンエアでも人気を博し、深夜放送が全盛の時代だったこともあり多くの若者に影響を与えた。
「一本道」は、等身大の心情を鮮烈な歌詞と真っすぐな歌声・メロディーに乗せ、当時の若者たちに大きな衝撃を与えた。昨今の若者言葉では、表現しがたい感動や衝撃・郷愁のような感情を端的に”エモい”という言葉で言い表すことがあるが、当時の多感な世代の若者にとっては、この楽曲との出会いはそれに近い感覚であったのではないだろうか。
その後の音楽シーンで活躍するミュージシャンの多くが、当時影響を受けたことを公言している。
「まちは裸ですわりこんでいる」はURCレコードで発売されていた1stアルバム「大阪へやって来た」に収録されていた楽曲であるが、本作に収録されたのは異なるバージョンである。
1stアルバムでは弾き語りスタイルであったのに対し、本作ではベースに細野晴臣、ドラムに松本隆、フラット・マンドリンに高田渡といったベルウッド・レコードのオールスターとも言えるメンバーがバッキングを務めている。
シングル盤の1枚2曲収録という限られた曲数の中で、A面が弾き語り、B面がバンドスタイルという全く違ったサウンドが楽しめる構成になっているのは、ジャンルや形式に特化せずに多様な音楽に取り組んでいくベルウッド・レコードの決意表明の様にも映る。
本作は、友部のベルウッド・レコードにおける唯一の作品となったが、「一本道」は2ndアルバム「にんじん」にも収録されたことで友部の代表曲となった。
〇オリジナルリリース:OF-2(1972年リリース)
<参加ミュージシャン>
友部正人
細野晴臣、松本隆、高田渡
▶山平和彦「放送禁止歌」
ベルウッド・レコード第1回新譜のうちの一作となった山平和彦の1stアルバム。
ベルウッド・レコード創設者の三浦光紀は、「ヤング・ギター」の編集長であった山本隆士に山平の「放送禁止歌」を紹介されると同時に発売を思い立ち、小室等やはっぴいえんど等と同様にベルウッド・レコード設立前にキングレコードからシングル「放送禁止歌/変化」(BS-1490)が発売された。
ベルウッド・レコード設立前から作品をリリースしていたこともあり、第1回新譜にアルバム「放送禁止歌」がラインナップされることとなった。
「放送禁止」を冠したタイトルは50年経った今でも強烈なインパクトを放っているが、発売当時はなおさらであった。さらに、本作に収録された「大島節」「月経」の2曲が問題視されたことから即回収に遭い、この2曲は「春」「そういうわけ」という楽曲に差し替えられ、タイトルも「放送禁止歌」から「途中」へと変更になった。
レーベル史に残る一大事となったが、本作発売当時に弱冠20歳でありながらも、60年代からのフォーク・ムーヴメントを引き継いだ社会的メッセージを含んだ作品を持ち味とした山平は、サウンドや芸術性などに重点を置いた作品が多いベルウッド・レコードの中でも稀有な存在であり、回収騒動も彼の感性やスタイルを象徴する出来事であったとも言えるかもしれない。
そんな強いメッセージ性が注目されがちな本作であるが、山平の独特な視点から生まれる攻撃的にも、繊細にも感じられる歌詞や、出身地である秋田の民謡の要素が取り入れられている点もポイントであり、多様な側面を持つ美しい作品である。
レコーディングには、ヒット曲「東京」で知られるマイペースのメンバーが参加しており、中島みゆきや德永英明の作品でも知られる瀬尾一三がアルバム全曲のアレンジを施した最初期のアルバムでもある。
今回の配信リリースでは、発売時回収となったオリジナル音源での配信となるため、回収によって幻となっていたアルバム本来の姿を十分に堪能していただきたい。
〇オリジナルリリース:OFL-3(1972年リリース)
<参加ミュージシャン>
山平和彦
原茂、村岡実、マイペース(森田貢、伊藤進、根次男)
◆再生はこちら
https://king-records.lnk.to/Housoukinshika
▶あがた森魚「乙女の儚夢」
シングル「赤色エレジー」に続き発売された、あがたのメジャーレーベルにおける最初のアルバム。
本作のオリジナルLPレコードに同封されたリーフレットには「あとがき」という形で、制作の経緯~過程、本作に対するあがたの思いが赤裸々に記されている。このアルバムに込めた意図や熱量を十二分に感じられる内容であることから、本作に限ってはここからの引用がやや多くなってしまうことをご容赦願いたい。
本作の前にもアルバムを自主制作で発売していたが、自身が納得いくものを作ることができず、「僕にも一度、とてもいいスタジオで僕の好きなミュージシャンと、経験と、才能に長ける技術者達と一緒に、僕の夢をいっぱいいっぱいに拡げ切れるL盤をつくらせてくださいっ!て云いたかった。」というあがたにとって、このアルバムの制作は待ちに待ったチャンスであったことが伺える。
そんな本作は、キングレコード・スタジオとモウリ・スタジオにて、兼ねてから交流のあったミュージシャンたちとユニークなアイデアが詰まった実験的なレコーディングがなされている。実験的な試みの代表格が「女の友情」という曲で、1934年発売の松島詩子と山野美和子による「女の友情の唄」の音源にあがたと遠藤賢司が重ねて歌うといった斬新な録音が行われている。
また、上述の「あとがき」にはビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」やニッティ・グリッティ・ダート・バンドの「アンクル・チャーリー」等を聴き、日本で発売されているヒット曲や曲のストックをまとめた様なアルバムに対して疑問を抱いたとも書かれている。
このような思いを受けて制作された本作は、アルバムにあわせて再録された「赤色エレジー」をはじめ実験的な収録楽曲と林静一による奇抜なジャケットデザインによって、アルバム全体であがたの掲げるコンセプトを形にした、芸術性の高い作品に仕上がっている。
ダウンロードやサブスクリプションで楽しむ際にも、ぜひアルバムを通して全曲を聴いて、ひとつの作品としての魅力を堪能していただきたい1枚である。
〇オリジナルリリース:OFL-5(1972年リリース)
<参加ミュージシャン>
あがた森魚
はちみつぱい(鈴木慶一、武川雅寛、本田信介、和田博巳、カシブチ哲郎、渡辺勝)、遠藤賢司、友部正人、鈴木茂 ほか
◆再生はこちら
https://king-records.lnk.to/OtomenoRoman
▶あがた森魚「噫無情(レ・ミゼラブル)」
1974年に発売された、松本隆プロデュース作品。
昨今でもテレビや雑誌などで「昭和」という時代にフォーカスが当たることは多いが、本作も「映画(キネマ)」というテーマを通じて、昭和初期のノスタルジックな情景を彷彿とさせながら、独自の世界観を作品全体で構築している。前作に続いて、テーマを掲げてアルバム全体がまとめられているコンセプチュアルな作品だ。
1曲目の「蒲田行進曲’74」は、1929年公開の映画「親父とその子」の主題歌や1982年公開の松竹映画でも知られる「蒲田行進曲」をカバーしたものだ。
当時の日本の映画界の活気が伝わってくるエネルギッシュなナンバーは、一度耳にしただけで作品の世界観に引き込まれる。
西洋の映画音楽を彷彿とさせる「永遠のマドンナK」やファンクなナンバーの「元祖ラヂオ焼き」といった楽曲がジャンルレスに並んでいながらも、楽曲冒頭でセリフが登場したり、フィルムが回るカタカタというSEなどを曲間で効果的に使ったりすることで、映画の場面が切り替わるような感覚で楽しむことができる。
他にも語るべき魅力が多くあるが、その中でも目を引くのがカバー曲の数々であろう。
日本でも江戸川蘭子を始め数多くカバーされる「上海リル」、はっぴいえんどの「はいからはくち」、ドイツ映画の主題歌をカバーした「モンテカルロ珈琲店(小さな喫茶店)」とルーツが全く異なる作品群が並ぶが、この無国籍な空気感が非現実的でファンタジックな世界へと誘ってくれるようにも感じ取れる。
アルバム作品におけるひとつの到達点とも感じられる本作は、風街ファンも必聴だ。
〇オリジナルリリース:OFL-22(1974年リリース)
<参加ミュージシャン>
あがた森魚
松本隆、鈴木茂、細野晴臣、鈴木博文、後藤次利、かしぶち哲郎、鈴木慶一、岡田徹、矢野誠、緑魔子、武川雅寛、クジラ ほか