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友川かずき、詩人・中原中也を歌う~サブスクで魅力を再発見Vol.3〜

2023年2月16日、歌手・友川かずき(現:友川カズキ)が73歳の誕生日を迎えた。
現在も変わらずライブ活動を継続する一方、詩人や画家など様々な分野で才能を発揮し、独自の世界観を体現する稀代の表現者として今もなお支持を集める。

今回は、友川かずきの表現者としての原点に立ち返った一作とも言える4thアルバム「俺の裡で鳴り止まない詩~中原中也作品集~」について触れていきたい。

本作は、ベルウッド・レコードのレーベル活動が停止した後に、ベルウッド・レコードのレーベルを冠して1978年に発売された作品である。

タイトルに「~中原中也作品集~」とある本作は、詩人・中原中也の作品に友川が曲を付けた作品。中原は、1907年(明治40年)生まれの近代詩人で、フランス詩の翻訳なども手掛けていた。30歳という若さで亡くなったが、生前に残した詩集「山羊の歌」は当時から評価が高く、没後も友人たちによって刊行された詩集「在りし日の歌」や文芸雑誌での追悼特集、戦後も中原の詩を収録した全集や文庫判などが度々刊行され、長きに渡って多くの人々に愛される詩人の一人となった。友川は、中学時代に図書館で偶然目にした中原中也の『骨』という詩に感銘を受けて詩作を始め、後に書き溜めた自身の詩に曲を付けたことでシンガー「友川かずき」の音楽人生を出発させた。つまり、友川にとって中原は、文学への入口でありながら、音楽の原点でもあるのだ。

現代詩人の詩に曲を付けるというのは、小室等や高田渡などベルウッド・レコード作品にもよく見られ、レーベルのカラーにもマッチしたものであると言えるだろう。それらの曲に用いられた詩の中でも中原の詩は、『サーカス』に出てくる「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」といったオノマトペを始め、言葉の並べ方にもリズム感があり、表現の奥深さや美しさだけでなく、声に出した時の音の心地よさが特に感じられる。故に、音楽との相性も良かったのではないだろうか。

本作における友川のメロディー・歌唱は抒情的なものが多く、詩によって異なるキャラクターをヴォーカルのニュアンスで巧みに表現している。友川の代名詞とも言える体中から絞り出す魂の叫びの様な絶唱は、『臨終』や『春の日の夕暮』などで聴くことができ、曲の中程で突発的に現れることで詩を印象付ける効果的な役割を果たす。アルバム1枚を通して聴くことで、友川の豊かな表現が感じられるはずだ。
アレンジは、3rdアルバム「千羽鶴を口に咬えた日々」に引き続き、寺山修司主宰の劇団・天井桟敷の作曲家・演出家であったJ.A.シーザーが担当した。ロック色の強かった前作とは打って変わり、ストリングス・ブラス・コーラスを起用するなど演劇的なアプローチが取られており、3拍子のメロディーに寄り添う伴奏から間奏では曲調も拍子も一変するプログレッシヴな展開をする『湖上』、リズムセクションとストリングスによる疾走感溢れる『桑名の驛』、グルーヴィーなバンド・サウンドと友川の力強いヴォーカルが印象的な『六月の雨』、ベルウッド作品でも群を抜いて壮大かつドラマチックな演奏の『坊や』など、ジャンルを超越した至極の音楽作品が織りなす詩の世界観を是非とも自身の耳で確認していただきたい。


▼俺の裡で鳴り止まない詩~中原中也作品集


オリジナルリリース: SKS-1014(1978年リリース)
参加ミュージシャン:大石恒夫、竹村進一、丹羽恵子、森岳史、古家恭子、平岩嘉信、石塚俊明、石井弘一、前田彰二、山田栄重、加藤高志、多田吉徳、大久保貞二、小林陽一郎、堀口博雄、衛藤幸雄、森本恵夫、曼珠沙華
配信はこちら:https://king-records.lnk.to/Nariyamanaiuta

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