プログレを聴こう~KENSO探求紀行~Vol.8

KENSO『ZAIYA LIVE』(1996年) 清水義央によるセルフライナーノーツ

1993年にリリースされたライブアルバム『LIVE’92』を収録した1992年2月29日以降、ミュージシャンとしては隠遁生活に入った私は、一市民として夏祭りで神輿も担ぎ、冬の餅つき大会にも参加し、幼い我が子とディズニーランドにも通った。2年と数ヶ月の間、色々と考え、そして再び活動することを決意する。

『ZAIYA LIVE』は1995年8月3日及び4日に吉祥寺シルバーエレファントで行われた復活ライブを収めたものだ。立錐の余地もない会場の様子から、ファンがKENSO再開を待ってくれていたことが伝わってきて大変に嬉しかった。

本2daysライブは当初CDとしてリリースすることは全く考えていなかったため、マルチトラックレコーディングはしておらず、PAミキサーからの2チャンネル・ライン音源に、チープな小型レコーダーによるマイク録音をエンジニア福島氏がミックスしてくれたものだ。故にそれぞれの楽器のバランスを修正することができず聴きづらいところもあるかと思う。

あるメンバーからは「このライブはKENSOの曲の“思い出しライブ”だったから演奏も荒く、リリースしたくなかった」という意見ももらった。いつものことながら自分勝手な私、ごめんね。

なぜ私がこのライブアルバムを出したかったのか、今となってはよく分からないが、おそらく「これからは自分のルーツであるロック色をもっと打ち出す!」という決意表明を行ったこのライブをCDにして残し、多くのファンに聴いて欲しかったのだろう。『夢の丘』の呪縛から解き放たれたいという気持ちもあったのかなあ。

アルバム冒頭は小口健一くんの強烈なオリジナリティが炸裂するヘビーな新曲「Gips」、ラストはハードロック色の濃い私の新曲「在野からの帰還」、元々は静謐な曲である「氷島」もドラムを入れてロックビートで演奏した。「心の中の古代」のロングバージョンを聴くと、活動休止期間に私は色々とアイディアを溜め込んでいたのだなと思う。

光田くんの傑作「謎めいた森より」の演奏は『LIVE’92』のときよりこなれている印象があるし、小口くんのシンセソロ「Es」は現在までのライブでの彼のソロパート(別名「小口ワールド」)の原型でもある。

当時のKENSOライブの見せ場のひとつであった村石雅行くんと小口くんのドラム・バトル(っていったって日本のトップドラマーのプレイと本業はキーボーディストの特技としてのドラムプレイ、互角なはずはない。ただ、小口くんの飛び道具とそれに対抗する村石くんのパフォーマンスはライブ会場にいた方には大受けだった)が正式音源として残っているのは本ライブだけだ。え?何?VHSビデオ『秘匿性心象』があるじゃないかって?君もマニアだね〜。

本ライブアルバムとは直接関係ないが、1995年8月のこのライブには後のKENSOと私のギタープレイに大きな影響を与える人との出会いがあった。当時、松任谷由実さんのツアーバンドのドラマーだった村石くんが、ツアースタッフであったギターテクニシャン志村昭三さんをライブに招待していたのだ。

終演後、酸いも甘いも嚙み分けるといった感じの志村さんは、「スタインバーガーしか持ってないわけじゃないんでしょ?清水君のギター、もっとよくしてあげられると思う。一緒にやりましょう」と私に言った。

その直後から私は志村さんの工房に足繁く通うようになる。私は自分がロックギタリストであることを再認識し、志村さんとならギターキッズだったころの憧れのギターサウンドを追求していけるのではないかとワクワクした。

それから約24年経った2019年、KENSOのライブ直前に志村さんと酒を飲みながらこんな話をした。

「志村さんは、95年のシルバーエレファントのライブに来てくれたんですよね」

「そうそう、村石からさ、“志村さん、僕がやっているKENSOってバンドの清水さんというギタリストをなんか、もうちょっとこう、よくしてもらいたいんですよね”と言われてさ、俺が“何、そいつ上手いの?”っていったら、“いや、上手くない、全然上手くない。でも、すげえ曲書くんですよ、その清水さんは”って村石が言ってさ、ははは。なんだよ、上手くねえのかよって、ははは」

どいつもこいつも歯に衣着せねえな、まったく。でも、一流のプロギタリストと日々接している村石くんや志村さんからしたらそうだろうともさ。

志村さんは私のギタリストとしての可能性を大きく広げてくれた。

私が1998年以来ずっと愛用している志村さんが製作してくれた赤いSSギター。私のエモーションを見事に伝えてくれる名器です。感謝。


■KENSO『ZAIYA LIVE』(1996年)
https://lnk.to/ZAIYALIVE

■プレイリスト第1弾「KENSOの前にコレを聴け」
https://lnk.to/KENSO_Playlist1
■プレイリスト第2弾 「KENSOを聴け(初心者編)」
https://lnk.to/KENSO_Playlist2
■プレイリスト第3弾「KENSOを聴け(マニア編)」
https://lnk.to/KENSO_Playlist3

■プロフィール
清水義央 Yoshihisa Shimizu (Guitar)
小口健一 Kenichi Oguchi (Keyboards)
光田健一 Kenichi Mitsuda (Keyboards)
三枝俊治 Shunji Saegusa (Bass)
小森啓資 Keisuke Komori (Drums)

1974年、リーダーの清水義央を中心にKENSOを結成。バンド名は在籍校であった神奈川県立相模原高校の略称“県相”に由来する。1980年に自主制作盤1stアルバム『KENSO』をリリースし、1985年にキングレコードのNEXUSレーベルより3rdアルバム『KENSO(Ⅲ)』でメジャー・デビュー。以降、メンバーチェンジを経ながらも長きに亘って活動を継続。ロックをベースに、クラシックやジャズ、民族音楽といった様々なジャンルの要素を採り入れた音楽性や高度な演奏テクニックによって国内外で多くの支持を集め、海外のロック・フェスティバル出演経験も持つ日本屈指のプログレッシヴ・ロック・バンド。

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