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聴けば生きる活力が湧いてくる、福田こうへいによる歓びの演歌

日本海に面し、東北の山々に囲まれ、米どころとして有名な庄内地方。山形県内でも独特の風土を持つ地域を舞台に、「時の流れに身をまかせ」などで知られる名作詞家・荒木とよひさが哀惜の歌詞をつづった。そこに三味線、バイオリン、エレキギターと波のように押し寄せる弦から始まる、往年の演歌らしい力強い楽曲。演歌といえば勿論哀愁も魅力だが、かつてTVやラジオからあふれ、人々が歌い競った80年代には明朗快活なものが実に多かったと思い出させる。「庄内しぐれ酒」跳ねたリズムは聴く者を心躍らせてくれる。楽曲だけにとどまらず、前向きで力強く若々しい福田こうへいの唄声もあいまって、望郷の念に覆われながらも抗って生き抜いてみせる、そんな“漢”(おとこ)の姿と重なる。

哀愁という意味では、より感じられるのが2曲目「親友よ」に違いない。こちらは全編にエレキギターが顔を出し、ブルースハープが要所を締め、フォークソングや演歌、歌謡曲の顔を出すエレジーとなっている。歌詞も、男が自らの人生をふと振り返ってみた一瞬を切り取っており、「庄内しぐれ酒」と共通要素を見受けられるが、ここでも、親友との絆を生きる力の糧とし、聴けば生きる活力を与えており、全体として等身大の福田こうへいを浮かび上がらせる楽曲だ。

そして3曲目は「男の祭り唄」だ。すでにコンサートでファンを楽しませている同曲は、豊作や大漁といった恵みへの感謝が込められており、福田の唄声にも力強さだけではなく、優しさを感じる。福田こうへいの祭り唄といえば、こちらもコンサートでお馴染みの、ライブCD『福田こうへいコンサート2021 10周年記念スペシャル』(2022年発売)にも収録されている「みちのく祭り唄」があるが、祭り太鼓と「ラッセーラー!」の声が会場に響き渡るそちらと比べると、福田自身の朗らかな笑顔がよりはっきりと見え、また異なる祭り唄の良さがある。

収録曲3曲を通じてあらためて感じるのは、福田こうへいが持つ伸びやかで高音の魔力であり、その唄声には快活な男らしさが満ちている。だからこそ「庄内しぐれ酒」や「親友よ」のように哀切を歌っても快活さを伴い、福田こうへいに背中を押される人々があとを断たないことを思い起こさせてくれる。3曲を収めた最新作「庄内しぐれ酒」は、2024年が明るい1年になるように福田が想いを込めたのかもしれない、そう思わせるほどに胸のすく1枚となっている。

Information

福田こうへい「庄内しぐれ酒」2024年1月1日発売
定価¥1,650 (税抜¥1,500)/KICM-31121

<収録曲>
1.庄内しぐれ酒 作詩:荒木とよひさ/作曲:徳久広司/編曲:南郷達也
2.親友よ 作詩:本橋夏蘭/作曲:大谷明裕/編曲:野村豊
3.男の祭り唄  作詩:石原信一/作曲:弦哲也/編曲:南郷達也

購入はこちら
https://kingeshop.jp/shop/g/gKICM-31121/

ダウンロード・ストリーミングはこちら
https://king-records.lnk.to/shonai_shigurezake

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