百田夏菜子が1stアルバム『ビタミンB』を携えた初のライブツアーを完遂 / ももクロ楽曲やカバー曲も飛び出した東京公演の模様をレポート

ももいろクローバーZの百田夏菜子が1stソロアルバム『ビタミンB』を携えて、キャリア初となるツアー『MOMOTA KANAKO LIVE TOUR 2025「VITAMIN-B」』を開催した。大阪国際会議場(グランキューブ大阪)メインホールから始まり、ファイナルとなった愛知・日本特殊陶業市民会館フォレストホールまでの全4公演の中から、今回は2月24日(月・祝)に東京・立川ステージガーデンで行われた2公演目の模様をレポートする。
百田ファンにはおなじみなのだが、アルバムタイトルの『ビタミンB』は、過去に番組内で出題されたクイズ問題【にゅーとんが りんごで発見 ◯◯】に対して、百田が「引力」ではなく「ビタミンB」と答えたことに由来。このポイントも踏まえた上で、本レポートを読み進めてみてほしい。
今回のライブは架空の製薬会社・百田製薬の工場をステージ上に再現。開場中もBGMではなく作業音のようなSEが鳴り響き、物語の始まりを予感させるような演出に。そして、オープニング映像が流れ始めると《時は209X年世紀末、度重なる気象変動・天変地異によって文明社会は大打撃を被った。荒くれ者がはびこる世の中で人々は活力を失っていく。しかし、ここに先の見えない闇を照らす一点の光あり。空前絶後の大波乱が起ころうとしていた…》というシリアスタッチなナレーションとアニメーションで、『北斗の拳』やアメコミの世界観を想起させるような幕開けに。
そして、オープニングのアニメ映像では百田製薬の社長と博士の会話が続いていく。先の見えない世界を救うべく、百田製薬では“究極の栄養ドリンク”作りに励んでいるというのだが、栄養ドリンクを作る作業員達の栄養が足りていないという事態に…。博士から「こんな時に、あの子がいてくれたら…」という心の声が漏れると、地響きとバイクのエンジン音が鳴り響き、「おめえら、元気足りてねぇんじゃねえか?上等だよ。この工場全部まとめて立て直してやるぜ、ビタミンBで!」と叫びながら、今回のツアーのキービジュアルにもなっているデコ出し&サングラスで、フリルやキラキラで可愛さもある全身真っ赤なヤンキー衣装を身に纏った百田がステージに登場。会場から大歓声が上がると、メタルロックナンバーのアルバム表題曲「ビタミンB」でライブがスタート。暴走族のレディースのようなダンサー2人組・姐さんズを従えたツッパリ夏菜子が激しく煽る中、スモークやバキバキの照明演出も加わり、観る者の心を昂らせていく。
続いて、作業員風の4人組ダンサー・4Bが加わると、ももクロの自己紹介ソング「ダンシングタンク♡」へ。今回のライブツアーの世界観を表現した歌詞に書き換えられており、1番が百田の自己紹介パートに。「おめえらに足りてねえのは、ビタミンBと太陽。太陽、降臨―!」と高らかに宣言すると、2番はツッパリ夏菜子の脇を固める2人組の女性ダンサー・姐さんズ、3番は4人組作業員ダンサー・4Bの紹介へと続く。激しいバンドサウンドに乗せたクラップ、コール、ゴーゴーダンス、ヘドバンで盛り上がり一気に駆け抜けると、一瞬静まった会場に美しいギターのアルペジオが鳴り響く。「このイントロはもしや…」とファンの期待感が高まる中、X JAPAN「紅」のカバーへ。まさに、緊張と緩和。歌が始まると曲の爆発力もさることながら、ハイトーンに惹きつけられる。ビジョンにはサングラスを外した百田の熱い眼差しが。ここまで息をつく暇も無いくらいの激しいサウンドの応酬だったのだが、これだけでは終わらない。続いて、「労働讃歌」のイントロが流れるとさらなる大歓声が上がる。ソロライブではあるが、ラップパートでは“ももクロ”を感じられるという安心感もあったのではないだろうか。立川ステージガーデンは、アリーナ席を囲むように2階席と3階席が設計されているため、「労働讃歌」のサビで赤一色に染められた会場中のペンライトが高く掲げられたシーンは圧巻。また、コールが上から降ってくるように鳴り響いていたのも印象的で、ライブのど頭から気持ちを一気にブチ上げられるようなブロックとなった。
一度暗転すると最初のMCパートへ。百田は照れながらもツッパリ夏菜子の設定のまま、「盛り上がってるかーい!楽しんでるかーい!テンキュー」と煽っていく。ここで、初日の大阪公演ではうっかり忘れていたという自己紹介をすると、会場は盛大な「かなこ⤴」コールに包まれる。そして、初のツアーへの意気込みを語ると次のブロックへ。
まずは、昨年夏の30歳を記念したソロライブで初披露された「熱帯夜 Fantasy」を姐さんズと一緒にパフォーマンス。続いて、歌始まりとピアノが印象的なバンドサウンドの楽曲「未知数」へ続く。この曲ではステージ上の工場セットを移動しながら歌う百田の姿と青の照明に照らされた落ちサビがとても印象的だった。
ここで再び、百田製薬を舞台にしたアニメーション映像へ。栄養ドリンク完成に向けて試作を繰り返す博士と夏菜子のコミカルなやり取りが続いていく。完成はまだまだ遠いと感じさせる中、試作品を飲むと夏菜子から赤色の成分が抜けてしまい…。ここで次のブロックへ。
前半のヤンキー衣装からガラッと雰囲気が変わり、清楚な白いふわふわのワンピース衣装にチェンジした百田がステージに登場すると、中盤ブロックは2022年にNHK『みんなのうた』として制作された「赤い風船」からスタート。前半はしっとりと座って歌唱。そして、後半からは歌いながら赤いボールを投げるというファンサービスも。続いて、静岡から新幹線で通っていた頃の思いを綴った「ひかり」へ。真っ赤な客席とステージ上でスポットライトを浴びる百田との対比が美しい。そして、照明が夕陽のようなオレンジ色に切り変わると、百田のフェイクから「今日の君へ」に続く。攻め攻めの前半ブロックからは一転、バラード曲を中心としたやさしいブロックとなったのだが、続いて、「皆さん座って聴いてください」と告げると百田はステージを降りて、アリーナ席の中央へと進んでいく。会場がザワつく中、アリーナ席真ん中の高台に設置された脚立に座って歌われたのは、ナオト・インティライミがプロデュースを手がけた「わかってるのに」。百田の口癖をもとにナオトがイメージを膨らませ、百田自身の歌へと仕上げたナンバー。これまでにもソロコンでは披露されてきたが、1stソロアルバム『ビタミンB』に満を持して収録され、今回のツアーではセットリスト中盤で、赤一色のペンライトに染まる会場のど真ん中で歌うという多幸感溢れる演出で届けられた形だ。歌唱後ひと際大きな拍手に包まれる中、ステージに戻ると、ムーディーで大人な雰囲気のナンバー「Doubt」で中盤のブロックを締め括った。
ここで再び、百田製薬を舞台にしたアニメーション映像へ。引き続き、博士と夏菜子が栄養ドリンクの研究を続けていると、荒くれ者が乱入。百田製薬の社長を人質に取り、究極の栄養ドリンクをよこせと要求してくる。博士と夏菜子vs荒くれ者の攻防が続く中、夏菜子が最後の手段として「にゅーとんが りんごで発見 ビタミンB」と叫びながら、ビタミンBを投入すると究極の栄養ドリンクが完成。それを自ら飲“スーパー夏菜子”へと進化して「引力」を味方につけたところでアニメがエンディングを迎えると…最後のブロックへ。
キラキラと輝いた黒のミニドレス衣装にチェンジし、スーパー夏菜子となった百田が再びステージに戻ると、ラストブロックは「ukiukihuman!」からスタート。今回のアルバムでは全13曲中、実に9曲の作詞を百田が担当しているのだが、「ukiukihuman!」は特にワードセンスやポジティブなエッセンスを堪能できるライブ定番曲だ。さらに今回はBurn-G(バンジーダンス)という新たな試みも。回転したり、ジャンプしたりしながらのパフォーマンスは運動神経の良い百田ならでは。今回のライブの後半の見所のひとつとなっていた。そして、ももクロ楽曲「5 The POWER」へと続く。少し意外な選曲な気もしたが、いとうせいこうによる歌詞、百田のラップが今回のライブの世界観にもとてもマッチしていたのが印象的。短めのMCを挟み、スタンドマイクがセットされると、最後に披露したのは氣志團の綾小路 翔が作詞作曲を手がけたアルバムのリード曲「惚れたが勝ちのI LOVE YOU」。6人のダンサー全員が加わり、赤一色で染まった会場の盛り上がりがピークに達したところで、ライブ本編は終了した。
曲が終わるや否や、すぐさまアンコールが沸き起こる。すると、アンコールではファンにはたまらないサプライズ演出が。待つこと数分、キラキラしたイントロでスタートしたアンコール1曲目は「アンコールしよ♡」。3階席から登場した百田は3階から2階、そしてアリーナへと客席を移動しファンサしながらパフォーマンスしていく。これには3階席や2階席最後列のファンも大歓喜。会場全体に最高の笑顔を振りまいていった。ちなみに、この曲はアルバムに収録されているクリスマスソング「クリスマスしよ♡」の替え歌バージョン。百田いわく“便利な1曲”だというこの曲は、昨年夏のバースデイライブでは「誕生日しよ♡」として披露されている。ファンにとっては、次はどんな「〇〇〇〇しよ♡」が聴けるのか?という新たな楽しみもできたのではないだろうか。
続くMCで今回のツアーグッズをアレンジしたアンコールの衣装について触れると、会場からは「可愛い!」との声が上がる。子ども達からも「かわいいー」という声援が聞こえてきたのが印象的だった。そして、ソロコンでは定番となっている百田の初作詞曲「それぞれのミライ」へ。これまでどんな思いで活動してきたのか、どんな未来を見つめているのか…そんなことが自身の言葉で綴られているため、百田を支えてきたファンにとって心に沁みる1曲。ミラーボールの演出も相まって、会場はほっこりとした空気に包まれていく。しかし、そんな空気のままでは終わらないところが百田らしい。最後は、自分の得意分野である能天気な部分を歌詞にしたと語って笑いを誘った後、「疲れた時や何もしたくない時に聴いてほしい曲です。明日からもそれぞれの日々が笑顔溢れる時間になりますように…」と優しく語り、新曲「コジらせMAX」を披露。「なるようになるからさ 人生、あげ潮だもん 甘いみたいしょっぱいみたい 最高だ!たまらんだ!」という、人生を浜松銘菓の「あげ潮」に例えるところは秀逸。まさに百田ワールド全開のポジティブな歌詞とコミカルな振り付けで盛り上がりを見せ、一体感と多幸感MAXのエンディングとなった。
今回のライブツアーでは、オープニングや幕間映像のコミカルなアニメーションでも「ビタミンB 」の世界観が表現されていたのだが、アルバムを通して聴いてからライブを体感してみると、「ビタミンB」とは百田にとっては「引力」を意味しており、幸せなことも様々な困難も含めて、色々なことを引き寄せてきた百田自身の人生を表現したアルバムであり、それを体現したライブツアーでもあったことが感じられたのではないだろうか。まさに、30歳のソロアイドル百田夏菜子の現時点での集大成と言ってもいいのかもしれない。
ソロアルバムリリースとツアー開催という初めての経験を経て、また大きな成長を遂げたことだろう。そんな百田のももクロとしての次なるライブは恒例の『ももクロ春の一大事2025 in 新発田市 〜笑顔のチカラ つなげるオモイ』。今年は4月12日(土)13日(日)の2日間、新潟県・新発田市の五十公野公園で開催される。今回のライブツアーを経た百田がももクロのパフォーマンスにどんなビタミンBを注入してくれるのか?新発田市をどんなひかりで照らしてくれるのか?百田とももクロの可能性はまだまだ未知数。これからの百田とももクロの活躍にも注目してほしい。
ライター:ATSUSHI OINUMA
MOMOTA KANAKO LIVE TOUR 2025「VITAMIN-B」
2025年2月24日(月・祝)
会場:東京・立川ステージガーデン
▼MOMOTA KANAKO LIVE TOUR 2025「VITAMIN-B」特設サイト
https://www.momoclo.net/vitamin-B/
▼セットリスト
M1. ビタミンB
M2. ダンシングタンク♡
M3. 紅/X JAPAN
M4. 労働讃歌
M5. 熱帯夜 Fantasy
M6. 未知数
M7. 赤い風船
M8. ひかり
M9. 今日の君へ
M10. わかってるのに
M11. Doubt
M12. ukiukihuman!
M13. 5 The POWER
M14. 惚れたが勝ちのI LOVE YOU
<ENCORE>
M15. アンコールしよ♡
M16. それぞれのミライ
M17. コジらせMAX
▼セットリストプレイリスト
https://playlist.kingrecords.co.jp/?post_type=playlist&p=2140