CRAZE、KING RECORDSイヤー作品のサブスクリプション配信開始に寄せて
1995年のデビューから2006年の解散まで、唯一無二の存在として日本のロックシーンを駆け抜けたバンド、CRAZE。その彼らがキングレコードに残した全音源が遂にサブスクリプション配信されるのに際し、メンバーから指名を受けた当時の制作スタッフが綴る四方山話です。
CRAZEがデビューした1995年はそれまでの歌謡曲がヒットチャート上位を独占していた状況から、Mr. Childrenやスピッツと言ったロックバンドが市民権を得た時期であり、歌姫系アーティストの台頭も含めて日本の音楽シーンはありとあらゆるジャンルが活況を呈している時代。一方、阪神淡路大震災やオウム真理教によるサリン事件等が起きた年でもあり、世相としてはシリアスな空気も含んだ、色んな意味で混沌とした年でした。そんな時代に突如ロックシーンに現れ、思う存分暴れまくり多くのロックキッズを虜にしたCRAZEとは一体どんなバンドだったのか。
今回原稿を書くに当たって担当していた2年間を振り返り、そして今改めて音源を聴き直して、彼らは本当に唯一無二のバンド。まさに”孤高のロックバンド”と呼ぶに相応しい存在だったということを確信しました。レコーディングでもライブでも、現場は常に緊張感に満ちていました。メンバー同士も慣れ合いの関係値では無く、常に自分を、そして他のメンバーにも妥協を許さない姿勢。「友達」「パートナー」「仕事仲間」といった類のものではなく、誤解を恐れずに言うと、生死を共にする「戦士」達の集いであったかと。それ故に関わるスタッフや関係者から良くも悪くも恐れられる存在として、ややもすれば孤立していたのかも知れません。
そして、結果的にはそこから生じてしまった苛立ちや焦りといったものが、デビュー後にヴォーカリストが3度変わるといった事態に繋がったのかも…。
ただ、その姿勢を貫き通したからこそCRAZEの音楽は雄々しく美しく鳴り響き、時代や世代を超えて今もなお輝いているのだと感じています。この音源を耳にした方は、是非、移籍以降の足跡もこの機会に聴いてみて欲しいと思います。
最後に。ヴォーカリスト抜きの3人で行われたラストライブの光景は現在でも私の心に強く刻まれています。お前ら本当にカッコよかったよ!
以下、作品毎のコメントも合わせて聴いて貰えると嬉しく思います。(海部幹男)
BE CRAZY(1stALBUM)
記念すべきデビュー作となったアルバム。デビューシングルであり、アルバムのリード曲でもあった「NAKED BLUE」はシングルとは違うバージョンが収められている。※シングル・バージョンは後にベスト盤「RESPECT DAYS」に収録。結成当時は人気バンドのフロントマンが集まった”最強のスーパーバンド”と呼ばれていたが、それぞれの前身バンドの持ち味を生かす…と言うよりも、全てを嚙み砕いて咀嚼したパワーとセンスに満ちた一枚となっている。このアルバムに影響を受けた世代がロックシーンに登場してきた時に、その影響力がどれだけ強かったかを伺い知ることが出来た。
配信URL:https://lnk.to/craze_be_crazy
THAT’S LIFE (+2) (2ND ALBUM)
シーンにインパクトを与えた1st.アルバムから僅か1年後にリリースされたメジャー2ndアルバム。刺々しいロックサウンドは過激さを増す一方、メロディーラインの美しさはより洗練されるという、バンドとしての飛躍的な成長が伺えるアルバムとなっている。CRAZEのことを所謂”ビジュアル系バンド”だとしか思っていなかったメディアの人間が大衝撃を受けていた様は記憶に新しい。「BABY PUNKS」「THAT’S LIFE」の2曲から「少年のままで」「傷」に繋がる流れは正に鳥肌ものだ。
ボーナス・トラックとして「RISKY」と「to me, to you」のシングル・バージョンが収録されている。
配信URL:https://lnk.to/craze_thats_life
BEAT SO LONELY ALL NIGHT LONG
キング在籍時にリリースした唯一のミニアルバム。当初はシングルが企画されていたが、前年のツアーで見せた凄まじい破壊力とクオリティーのライブを音源化してファンに聴いて貰いたいというアイディアから、表題曲以外はライブ音源を収録した変則的な作品となっている。タイトルチューンの「BEAT SO LONELY,ALL NIGHT LONG」はアルバム「THAT’S LIFE」からの流れを継いだスピード感と切なさを持ち合わせたナンバーで、これから進むであろうバンドの覇道を期待させてくれるものであった。(当時のキャッチは”OUR SPEED IS FASTER THAN GOD”)残念ながらその後に他社への移籍が決まり、CRAZEがキングレコードに残した最後のスタジオ音源となった。因みにジャケットワークは当時レーベルメイトであったCOPASS GRINDERZのZEROが手掛けている。
配信URL:https://lnk.to/bslanl
RESPECTABLE DAYS (BEST ALBUM)
移籍決定後に、キングスタッフの考案・選曲でリリースされたベスト盤。RED DISCがロックチューン中心の10曲、BLUE DISCがバラード中心の10曲で構成された2枚組となっている。後に紙ジャケ仕様で再発されたが、オリジナル盤はスチール缶に収められた豪華仕様となっていた。CRAZEというバンドがジャンルに捉われずに実に幅広い音楽性と歌詞世界を持っていたことがよく分かる一枚でもある。
配信URL:https://lnk.to/craze_respactable_days
live (LIVE ALBUM)
これも同じくバンド移籍後にレーベル企画として制作された作品。1996年12月の「”THAT’S LIFE” FOUR fuckers ROYAL V.I.P TOUR’96」ツアーファイナルとなった中野サンプラザ公演から15曲。1995年の「BE CRAZY ‘95」ツアー初日である10月の日比谷野外音楽堂公演から4曲を収録したキング時代唯一のライブアルバム。20年近く経った今聴いても改めてその演奏能力と楽曲のクオリティーには驚かされる。ここに至るまでに全国で観客を震撼させたステージからの熱量は他に類を見ない。是非、ライブ映像もチェックして欲しい。
配信URL:https://lnk.to/craze_live
NAKED BLUE(ミュージックビデオ)
ジャケット撮影と合わせてニューヨークで撮影されたMV。ハドソン川の岸壁から菊地が身を投げるシーンは台本にはなく、現場でスタッフに止められながらも自らの意思で敢行したものである。無類の車好きで知られる菊地が、この撮影の為に国際免許を取得したというエピソードもある。
RISK(ミュージックビデオ)
奥行きが全く分からずどこまでも続いているかのような真っ白な空間は、自動車の撮影等に使われる四つ角が全て丸くなっている白ホリスタジオで撮影されている。ソリッドなサウンドは確実に時代を一歩先取りしており、それ一体となったメンバーのアクション、表情は観た者に衝撃を与えた。
to me, to you(ミュージックビデオ)
海外の渓谷や砂漠地帯で撮影されたかのような雄大なロケーションだが、実際には千葉県の採石場がロケ地。ドローンも存在しない当時に、まるで空撮で撮られたような映像を生み出したクリエイトチームの力量には感心される。色褪せることのない名作MVと言えるだろう。
BEAT SO LONELY,ALL NIGHT LON(ミュージックビデオ)
合成では無く実際にスタジオで大量の”雨”を降らせての撮影。取り直しの出来ないずぶ濡れになっての演奏シーンは今見てもスリリングさに満ちている。ラストで瀧川が投げ捨てるギターをローディーがしっかりと受け止めた際には周囲から歓声が上がったというこぼれ話もある
傷(ミュージックビデオ)
晩秋の北海道ロケーションで撮影された1本。旭川にある廃工場での撮影だが、撮影を進める内に気温がどんどん下がり、夜になってからは指を動かすのも大変なぐらいの極寒状態であった。楽曲の持つスピード感と鋭利さ、そして切なさが映像と一体となった好作品。
I LOVE YOU(ミュージックビデオ)
BODY時代の代表曲をCRAZE名義でセルフカバーした作品。監視カメラのように固定された画角の中で好き放題に演奏をするメンバーの姿が生き生きと捉えられている。海外のメロコアバンドやオルタナバンドが好みそうな映像に仕上がっているが、発案は菊地によるものだったと記憶している。
少年のまま(ミュージックビデオ)
「傷」と同じく北海道で撮影されたMV。山奥の廃線跡を歩くメンバーの姿が中心となっているが、ここで見せる飾らない表情と大自然とのマッチングは、名作映画「スタンドバイミー」さえ彷彿させる。ラストシーンの機材だけが置かれた湖のシーンは、本来ならば演奏シーンを撮影する予定だったが、メンバーが現場に現れなかった為の苦肉の策であった。
TUSK 3 SONGS (MINI ALBUM)も同時配信
ZI:KILLのVo.であり、デビュー前、そして四代目のCRAZEでヴォーカリストを担ったTUSK(板谷祐)が、ZI:KILL解散後にリリースした初のソロ作品。プロデュースとギターを山本恭司(BOW WOW~VOW WOW~WILD FLAG)が手掛け、ベースには戸城憲夫(ZIGGY、LANCE OF THRILL)、ドラムはCRAZEの菊地哲という超強力な布陣で制作された。この後にTUSKと戸城がTHE SLUT BANKSを結成する契機ともなった作品。クリックを使わずに録ったドラムが3テイクとも1秒以内の誤差だったという菊地哲のドラミングの凄まじさが伺える逸話も残っている。
配信URL:https://lnk.to/tusk_3songs
CRAZE PROFILE
D’ERLANGER(デランジェ)解散後(現在は復活)の瀧川一郎、菊地哲が、バンドBODY解散後、
藤崎賢一(元JUSTY-NASTY)、飯田成一(元ZI:KILL)を加えてCRAZEは1994年7月に結成された。
翌1995年9月にシングル、「NAKED BLUE」でセンセーショナルにメジャーデビュー。
その後間髪入れずに、シングル3枚、オリジナルアルバム2枚、ミニアルバム1枚、べストアルバム1枚、ライブアルバム1枚、映像作品もライブ、MV集、ドキュメンタリーフィルムなど5作をキングレコードに残した。合計約3年のキングレコード在籍後、1998年他レコード会社に移籍した。
CRAZE(KING RECORDS’ YEARS) are
藤崎賢一(Vocal) 1967年1月25日生は、兵庫県出身 元6six、JUSTY-NASTY
瀧川一郎(Guitar)1968年1月5日生、京都府出身 D’ERLANGER、元BODY
飯田成一(Bass)1968年11月6日生、静岡県出身 幻覚、元ZI-KILL、johnny loves brautigan、vez、Daisy*glitteR、OXYMORPHONN
菊地哲(Drums)1969年2月22日生、東京都出身 D’ERLANGER、元ZI-KILL、元BODY
キングレコード作品一覧
https://bio.to/craze
PLAYLIST「GREATEST YEARS OF CRAZE IN KING RECORDS」
https://lnk.to/craze_king