前島亜美 デビューアルバム『Determination』レビュー、心の内をさらけ出した個性豊かな10曲
2010年から2017年までグループ活動をしたのち、グループ卒業後は声優の仕事を中心に、舞台俳優やナレーター、ラジオパーソナリティなど活躍の幅を広げている前島亜美。彼女の代表作であるメディアミックスプロジェクト『BanG Dream!』では、作中に登場するアイドルバンド・Pastel*Palettesのボーカル・丸山彩役としてカバー曲も含めて70曲以上の楽曲を歌唱するなど、これまでの多岐にわたる場での歌唱経験を活かしながら活動を続けている。
そんな前島がソロアーティストとしてデビューを飾る。今回紹介する11月20日に発売された1stアルバム『Determination』では、収録曲10曲のうち2曲で自身初の作詞に挑戦するなど、アーティスト・前島亜美としての第1歩をしっかりと刻みつける内容となっている。音楽に懸ける彼女の想い、これから歩むソロアーティストとしての夢を表現した10曲をレビューしていこう。
M1「Determination」
“Determination=決意“という曲名どおり、「ここから始まるんだ!」という前島の強い想いが節々から伝わる、希望にあふれたポジティブナンバー。疾走感のあるバンドサウンドをベースに、リスナーの心を盛り上げるようなストリングスの音色、そして前島のエモーショナルな歌声が加わり、よりドラマチックに楽曲が展開されていく。サビで披露されるファルセットの美しさも印象的だ。この楽曲の作詞は前島が務めており、歌詞には自身の心の内までさらけ出したような飾らない言葉が多く並ぶ。特にラスサビの「孤独も不安も 全てさらけ出して いつか愛しいと笑うから 全て“誇り”だと語ろう」という言葉からは、彼女がこれまでに経験してきた困難、そしてそれらを乗り越えたことで手に入れた心の強さが感じ取れる。前島のソロ歌手としての幕開けを自ら後押しするような1曲だ。
M2「初雪とKiss」
雪の降る夜にぎこちなく口づけを交わす2人の姿が目に浮かぶ、初めての恋を歌った王道アイドルソング。キスをしたことで更に恋に落ちていく女性のピュアな可愛らしさと、前島の甘くイノセントな歌声の相性がとにかく素晴らしく、いつまでもこの幸せな雰囲気に浸っていたくなる。リバーブを効かせたぼんやりとしたサウンド感や、キメで使われるサウンドエフェクトなど、どこか懐かしさを感じさせる楽曲アレンジもなかなかオシャレ。平成初期の恋愛ドラマの1シーンで流れていたとしても違和感がないかもしれない。
M3「SCARLET LOVE」
情熱的に歌い上げるラテン調のアップチューンは、艶やかなアコースティックギターの音色が映えるコケティッシュな1曲。静かな冬の初恋を歌った「初雪とKiss」と同じくラブソングというカテゴリに入るものの、「初雪とKiss」とはほぼすべての要素が対照的で、楽曲の雰囲気も歌声の年齢感もあでやかな大人っぽさが満載だ。一方で、歌詞には恋の駆け引きなんてものが存在しないかのような、力強くストレートな愛の言葉が多く並んでおり、その視点で言えば「初雪とKiss」の延長線上にあると言ってもいいだろう。この2曲を歌いこなす前島のテクニカルな表現力も素晴らしい。
M4「Unfallen Angel」
藤林聖子・渡辺未来というベテランコンビが提供した、バトルアニメのOPテーマのような往年の熱いアニソンを彷彿とさせるギターロックナンバー。母音を強調した前島のパワフルな歌声も聴いている者の心をたぎらせ、特にサビラストの“飛び立て”のシャウト気味に紡ぐ伸びやかなボーカルはこれまでの前島の楽曲にはあまり見られなかった表現だ。傷つきながらも前へ踏み出していく心の強さを求める姿は、1曲目の「Determination」とは違う形で彼女の決意を歌っているようにも聴こえる。
M5「ポルターガイスト」
“ポルターガイスト”という単語から一般的にイメージされるホラー要素よりも、おばけと一緒に遊ぶエンタメ感に重きを置いた、一風変わった視点が面白い楽曲で、擬音やオノマトペを多用した、音の響きを重視するようなアプローチが印象的。楽曲の構成も独特で、通常は1番Aメロと2番Aメロ、1番Bメロと2番Bメロでメロディフレーズを同じ、ないしは似通わせた形にするところを、この曲では1番Bメロのフレーズが2番Aメロで使われ、2番Bメロではこのパートでしか登場しないメロディがいきなりポップアップしてくるなど、まさにおばけのように神出鬼没。そんな楽曲の雰囲気を受けてか、前島のボーカル表現もキュート・コミカル・ホラー・クールとなかなか多彩。まさに楽しさの塊のような楽曲だ。
M6「MAKE IT NOW」
浮遊感のあるチルなA・Bメロを経て、サビではダンサブルに魅せる。前島亜美の新たな魅力を創出する挑戦的な四つ打ちダンスナンバーは、音に身を任せるような縦ノリ感が気持ちいい1曲だ。可愛さを残しつつ大人っぽさを押し出した前島の歌声のバランス感が絶妙で、特に英語部分の発音からはその要素が顕著に感じられる。そして特に印象的なパートは、1番サビ直前でささやかれる“I Just Say”のウィスパーボイスだろう。是非ともヘッドホンを使ってASMRのような雰囲気を味わってほしい。
M7「職業:あみた」
“あみたコール”による幕開け、心無い声を“うるさーい!”と一蹴していくコミカルなBメロの掛け合い、ワルツが突如始まる2番Aメロなど、楽曲を提供したヒャダイン(前山田健一)節が全開なユーモラスなナンバー。テンションも声色も小節ごとに目まぐるしく変えながら突き進んでいく様は、アルバムの中でもかなり異彩を放っている。一方で、コミカルさに引っ張られるが、歌詞をよく読み込んでみると「職業:あみた」=どんなに辛い時でも自分は唯一無二であるというメッセージが常に掲げられているのがわかる。その視点で考えると、“あみたコール”とは自分を鼓舞するための自己暗示的な側面になっているとも言え、それによりエモさが増すのも納得だ。
M8「Blue Moment」
ピアノの音色や疾走感のあるバンドサウンドが特徴的な、王道とも呼べるような青春ナンバー。清涼感のあるキラキラしたサウンドと、前島のイノセントな歌声の相性は抜群で、特に風景が一気に色づいていくようなラスサビの転調部分は、この曲のドラマチックさを1段も2段も引き上げている。聴く人の年代によって、現在の青春を描いたのか、ノスタルジーを感じさせる楽曲となっているのかは意見が分かれることだろう。この曲を通して、それぞれの青春を感じてみてはいかがだろうか。
M9「星を見上げて」
このアルバム唯一のバラードナンバーは、満天の星空の下でたたずむ前島の姿が目に浮かぶような、ドラマチックで壮大な1曲になっている。楽曲が進むにつれて段々音数が増えていく王道な展開も、聴く人の心を盛り上げるには十分だ。また、弱さを見せながらも“輝き続ける星のように、前島亜美という光をいつまでも届けよう”というファンに向けた決意と覚悟を歌った歌詞は、「Determination」で歌ったメッセージとも共通しており、それだけ彼女の中で一貫したものがあるのだと感じさせてくれる。1音1音噛み締めるように歌われる、優しくも凛とした前島の歌声にいつまでも聴き惚れていたい。
M10「Azurite」
3年前に発売された彼女の写真集のタイトル「白群」の語源でもある宝石の名前を冠した、肩肘張らない自然体な雰囲気で展開される、前島が作詞を担当したシンプルなミディアムナンバー。本人作詞楽曲である「Determination」が主に矢印を自分に向けた楽曲だったのに対し、「Azurite」は他者、つまりファンを意識した言葉が多く並ぶ。ファンの存在が彼女にとってどれだけ大きなものなのか、この楽曲からその一端が垣間見えることだろう。ラストの”wow oh oh oh”のパートは、ライブでファンと一緒にシンガロングする光景が目に浮かぶ。彼女の心からのメッセージをしかと心に刻んでほしい。
アルバム全曲を振り返ってみると、彼女の真っ直ぐな想いを乗せた爽やかな楽曲から、胸がキュンとするようなラブソング、そしてコミカルなアイドルソングまで、このアルバムは彼女の多彩な表現力を示した1枚となっているのがわかる。とはいえ、まだこのアルバムはあくまでもスタート地点。ここからアーティストとしてどのように歩みを進めていくのか、彼女の無限の可能性に大いに期待したい。
来年4月13日には神奈川県・関内ホール 大ホールにて1stライブが開催予定。これまで数多くのステージに立っている彼女だが、ソロアーティストとして立つ初めての舞台はこれまでとは違う特別な日になるはずだ。また、ライブパフォーマンスにおいて欠かせないダンスも彼女の得意分野。今回の楽曲にダンスが組み合わさることで、楽曲の魅力が何倍も増幅するのは間違いないだろう。是非ともライブ会場で、彼女の“Determination”をしっかりと受け止めてみてほしい。
Information
1st アルバム『Determination』
発売日:2024年11月20日(水)
buy:https://ami-maeshima.lnk.to/1st_AL
listen:https://lnk.to/debutAL_determination
収録曲
01「Determination」 作詞:前島亜美 作曲・編曲:藤永龍太郎(Elements Garden)
02 「初雪とKiss」 作詞:森月キャス(Blue Bird’s Nest) 作曲:大西克巳(Blue Bird’s Nest) 編曲:日比野裕史(Blue Bird’s Nest)
03「SCARLET LOVE」 作詞:内田ましろ 作曲:和田真紀子 編曲:鶴﨑輝一
04「Unfallen Angel」 作詞:藤林聖子 作曲・編曲:渡辺未来
05「ポルターガイスト」 作詞・作曲・編曲:山崎真吾(SUPA LOVE)
06「MAKE IT NOW」 作詞・作曲・編曲:Nika Lenz(Arte Refact)
07「職業:あみた」 作詞・作曲:前山田健一 編曲:板垣祐介
08「Blue Moment」 作詞・作曲:YAS 編曲:永井正道
09「星を見上げて」 作詞・作曲・編曲:篠崎あやと 橘亮祐
10「Azurite」 作詞:前島亜美 作曲:ときも 編曲:河合英嗣
【初回限定盤】
品番:KICS-94179
価格:¥6,050(税込)
形態:CD
封⼊特典:40P写真集・前島亜美1st LIVE チケット先⾏抽選シリアルナンバー
【通常盤】
品番:KICS-4179
価格:¥3,300(税込)
形態:CD
初回製造分封⼊特典:前島亜美1st LIVE チケット先⾏抽選シリアルナンバー
前島亜美 1st LIVE
⽇時:2025年4⽉13⽇(⽇)
会場:関内ホール
時間:開場 16:30 / 開演 17:00 会場
※1st ALBUM『Determination』の初回製造分に本公演の先⾏抽選シリアルナンバーの封⼊を予定しております。