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【全曲レビュー】ユニットコンセプトである「ワル」な一面をも覗かせた天狼群1stアルバム『KING OF EVIL』

天狼群アーティスト写真

憧れの先輩に振り向いてもらうために無理に悪い子を演じる主人公・優谷優と、彼女を取り巻く仲間たちを描くTVアニメ『ばっどがーる』。「まんがタイムきららキャラット」にて連載中の4コマ漫画を原作とした本作は、2025年7月の放送開始以降最新エピソードが公開されるたびに注目を集めた。

そんな本作のメインキャラクター優谷 優(CV: 橘 杏咲)、水鳥亜鳥(CV: 花宮初奈)、涼風涼 (CV: 松岡美里)、瑠璃葉るら(CV: 花井美春)によるキャラクターソングユニット・天狼群による1stアルバム『KING OF EVIL』が9月24日にリリースされる。TVアニメ『ばっどがーる』のOPテーマ「すーぱーびっぐらぶ!」をはじめ10曲を収録する今回のアルバムの魅力を紐解いていこう。

M1「ツッパリHigh School Rock’n Roll (登校編)」


本アルバムの幕開けを飾るのは1980年代前半に一世を風靡したロックバンド・横浜銀蝿の代表曲のカバー。“ヨーラン”や“リーゼント”といった当時の不良カルチャーを象徴するワードが多数登場する本楽曲を、あえて当時の歌詞ほぼそのままに歌うという試みは実に挑戦的。楽曲中で光る天狼群メンバーの演技歌唱も聴きどころで、瑠璃葉るらが“お手手つないでえきまでしあわせ”とのフレーズに合わせてとろけるような声を響かせたかと思えば、それに続く涼風涼は“ガンのくれあいとばしあい”とドスを効かせた声を披露したりと、キャラクター性が強く反映されている。

M2「彼女のModern…」


続いて収録されるのは1994年にリリースされたロックバンド・GLAYの大ヒットソングのカバー。エネルギッシュなロックサウンドと退廃的な歌詞世界が魅力の本楽曲を天狼群の4人が代わる代わるに歌い上げ、本楽曲でしか味わえないキュートさを醸し出す。中でも印象的なのは“君の“S・D・R”(セックス・ドラッグ・ロックンロール)”とのフレーズだ。その歌声は無邪気さに満ちており、セックスやドラッグとは縁遠い空気感。そこにはTVアニメ『ばっどがーる』の「無理に悪い子を演じる」という設定が色濃く感じられ、なんとも味わい深い。

M3「すーぱーびっぐらぶ!」


アニメのOPテーマである本楽曲は、作詞を烏屋茶房、作曲をヒゲドライバーが担当する王道アニメソング的な仕上がり。アップテンポな曲中に高密度に歌詞を詰め込み、ハイスピードで作品の世界観を歌い上げていく展開には心酔させられずにはいられない。タイトルが示す「びっぐらぶ」がどれだけ人を変えるかを綴ったその歌詞は甘々な表現にあふれているが、その一方で“トホホ これじゃ ダメダメばっどがーる……”をはじめ残念さを感じさせるフレーズも散りばめられているのも面白い。間奏で優谷 優が発する“……大好きです!!”は破壊力抜群なので必聴。

M4「超らぶふぉーえばーもあ」


“超らぶ 超らぶ 超らぶふぉーえばー”とのフレーズが徐々にクレッシュエンドしていくというパンチの強い幕開けを見せる優谷優のソロ楽曲。そこで歌われるのは狂気すらも感じられる重い愛だ。“あなたと同じ空気を吸っている なんて畏れ多いこと”などの過度にへりくだった表現がその狂気をさらに加速させる。そんな勢いあふれる歌詞を乗せるのは疾走感あふれるロックサウンド。その圧倒的なまでの力強さは曲中で歌われる愛の重さを表現しているようで、聴いていて血がたぎる。途中展開される静けさのあるCメロと、そこで歌われる相変わらずの重い愛も要注目。

M5「My Sweetie Dog」


“あのね 好きならもっとちゃんと言って?”との歌い出しからスタートする、「超らぶふぉーえばーもあ」のアンサーソングともとれる水鳥亜鳥のソロ楽曲。ニュアンスをたっぷりと含んだその歌声は、艶やかでありながらアイドル的なキュートさを持ち、フレーズの一つひとつを粒立たせる。なかでも2番冒頭の“だいっきらい♡”の言い回しは小悪魔的で、その歌声を際立たせる一瞬のブレイクもテクニカルで心地よい。そんな歌声を乗せるエレクトリカルで疾走感あふれるサウンドからは、アイドルソング的煌びやかさを感じ取ることができる。

M6「きみのとなり」


テンションの高い楽曲が続く本アルバムのなかで一際異彩を放つのが涼風涼によるメロウな本楽曲だ。愛しい人に向けた秘めたる想いを綴る歌詞世界は切なくも甘酸っぱい仕上がりで、その中に挟み込まれる“「となりに居るのは私だから」”との決意の一言は実に力強く、胸がぎゅっと締め付けられる。そんな歌声を乗せるのは往年のJ-popを感じさせるスローテンポなナンバーで、シンセサイザーの音色がどこかレトロさを感じさせる。一方で言葉の疎密を巧みに切り替える歌い回しは現代的。言葉を詰め込むことで切実さを表現したCメロには耳を奪われること間違いなし。

M7「はーと掻き回してアゲル♡」


瑠璃葉るらによるソロ楽曲は、タイトルが持つキュートなイメージをそのまま音楽に落とし込んだかのようなガーリーなポップチューン。“「私ってば、完璧かわいい!」”とのセリフから走り出すと、その後も終始一貫してかわいさを表現したフレーズが乱打されるという非常にコンセプチュアルな仕上がりとなっており、聴くものを楽しませてくれる。そのかわいさをギュッと濃縮する高密度な言葉運びも秀逸で聴き応え抜群。なかでもサビの“スキもキライもエモいもウザいも”とたたみかけるような節回しは聴く者の心拍数が上がること請け合い。

M8「BAD SURPRISE」


作詞・作曲・編曲をZAQを担当したアニメのEDテーマは、歪みを持った音色が印象的なイントロから走り出すロック調のナンバー。その上に乗るどこか気怠げな歌い回しはタイトル通りの「BAD」な空気に満ちる。そんな本楽曲の面白さはサウンド感と相反した、平凡な少女を描き出す歌詞にあるだろう。冒頭から“何年も生きて続いたことって 呼吸ぐらいしかないもんで”とありふれた人物像を表現すると、その後には“Bad Styleでへいよーめーん? ”と用法を間違った「BAD」なフレーズも登場。そのサウンドと歌詞のチグハグ感こそ『ばっどがーる』的な世界観だと感じずにはいられない。

M9「GO! GO! MANIAC」


アニメ『けいおん!!』(第2期)の前期OPテーマとして使用された、放課後ティータイムによる定番アニメソングを天狼群がカバー。オリジナル版に存在するキュートさと疾走感をそのままに、メンバーそれぞれが楽曲の世界観を再解釈して歌声を響かせる。オリジナル版では平沢唯(CV:豊崎愛生)がメインボーカルとして歌唱を担当しているのに対し、本カバーでは天狼群の4人がマイクリレーで歌唱していくのもひとつの特徴。個性の異なる歌声に次々スイッチしていくその展開は聴くものを飽きさせない。

M10「KING OF EVIL」

アルバムのラストを飾るのは作詞をZAQ、作曲・編曲を本多友紀(Arte Refact)が担当するアルバムリード曲。力強いロックサウンドの上で天狼群が華麗なコンビネーションとユニゾンを披露し、聴くものを耳から魅了する。そんな本楽曲の歌詞は天狼群の面々の在り方を記したかのような内容となっており、いわば彼女たちのテーマソング的な仕上がり。なかでも曲の締めくくりとして登場する“孤独な狼の群れ”とのフレーズは彼女たちが目指すところをはっきりと明言しているようで印象深い。

カバー曲やソロ曲を含む全10曲を用いてメンバーの個性を表現する同時に、ユニットコンセプトである「ワル」な一面をも覗かせる天狼群1stアルバム『KING OF EVIL』。そのバラエティの豊かな仕上がりは実に魅力的で、聴けば今後の彼女たちの活躍に期待が膨らむこと間違いなしだ。今後再放送も控えているTVアニメ『ばっどがーる』を楽しむと共に、今後の天狼群の活躍にも注目していきたい。

Release Information

天狼群1stアルバム『KING OF EVIL』

天狼群1stアルバム『KING OF EVIEL』アニメ盤
初回限定アニメ盤
KICA-92640 定価:¥3,630 (税抜価格 ¥3,300)

天狼群1stアルバム『KING OF EVIEL』アーティスト盤
アーティスト盤
KICA-2640 定価:¥3,630 (税抜価格 ¥3,300)

発売日:2025年9月24日(水)
収録内容:
M1:ツッパリHigh School Rock’n Roll(登校編)/天狼群
M2:彼女の“Modern…”/天狼群
M3:すーぱーびっぐらぶ!/天狼群
M4:超らぶふぉーえばーもあ/優谷優(CV.橘杏咲)
M5:My Sweetie Dog/水鳥亜鳥(CV.花宮初奈)
M6:きみのとなり/涼風涼(CV.松岡美里)
M7:はーと掻き回してアゲル♡/瑠璃葉るら(CV.花井美春)
M8:BAD SURPRISE/天狼群
M9:GO! GO! MANIAC/天狼群
M10:KING OF EVIL/天狼群

アニメ盤:https://tenrogun.lnk.to/1stALanime
アーティスト盤:https://tenrogun.lnk.to/1stALartist
配信:https://tenrogun.lnk.to/KING_OF_EVIL

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