【ELECTRIC BIRD】TREASURE ISLAND vol.2
【Electric Bird(エレクトリック・バード)レーベルについて】
日本を代表するジャズ/フュージョン創世記の最重要レーベル「Electric Bird (エレクトリック・バード)」 。“世界に通用するフュージョン・レーベルを!”を掲げて、70年代後半にキングレコードから誕生したレーベルであり、当時、担当プロデューサーの采配により、日本主導で日本、そしてニューヨーク の著名かつ魅力的なアーティストを次々と輩出し、最先端のフュージョン・サウンドで世界をアッと驚かせ、音楽界で「日本にエレクトリック・バードあり」と注目を得たのである。
エレクトリック・バードが誇る膨大なカタログから、今年2022年10月26日と11月9日、2回に分けて合計52タイトルが、サブスク、ダウンロード配信、ハイレゾ配信されることが決定した。
エレクトリック・バード・プロデューサー(1977年~1989年)Sep. 2022 川島重行コメント
この度開始されるこのコラムでは、邦洋問わずレーベルに関わった様々なミュージシャンにスポットを当てて行きたい。
第2回目は、ドミニカ共和国サントドミンゴ出身のジャズピアニスト、ミシェール・カミロの登場である。超絶技巧のそのプレイスタイルは緩急自在、日本人にはないそのリズム感、テクニックを惜しげもなく披露してくれている。
さらに同じ鍵盤奏者で毛色は全く異なるが、同レーベルに1枚のみソロ・アルバムを発表している、日本を代表するジャズ/フュージョン・バンド「カシオペア」のメンバー、そして最近は「かつしかトリオ」を結成して活動、そのほかメディアでのマルチ・タレントとしての活躍も記憶に新しい、向谷実を紹介したい。
ミシェール・カミロ「ホワイ・ノット」
ジャズ・ピアノ界に革命を起こしたミシェール・カミロの記念すべき初リーダー・アルバムにして衝撃的な演奏を収録したエポック・メイキングな名作。
出だしからワクワクするイントロで始まり、TOKYO、NEW YORKではないまた異国の香りを感じさせるサウンド・テクスチャー。唯一無二の名曲であり表題曲である“Why not?”(「フレンチ・トースト」フレンチ・トースト(同レーベル)収録曲の再演バージョン)を頂点に緻密なサウンド・クリエイションがなされている。その後のミシェールのメジャーでの大活躍を予感させるキャリア最初期、比類なきジャズ・ピアノ名作と言える。
録音: Clinton Studio, N.Y.,Feb.25,26&27,1985(オリジナル発売:1985年)
<パーソネル> ミシェール・カミロ(p)/ ルー・ソロフ(tp)/クリス・ハンター(as, ts)/アンソニー・ジャクソン(b)/デイヴ・ウェックル(ds)/サミー・フィガロア(perc)/グアリオネス・アキーノ(perc)
再生はこちら:lnk.to/PI5AOZG9
ミシェ-ル・カミロ「イン・トリオ」
ミシェール・カミロの2ndソロアルバム。”We Three”以外は長尺のブレンディな楽曲が中心となっているが、まったくもってエレガントな佳曲の連なり。過去2作を経て今作でこのトリオでの誇らしさを表現しているようである。ヴィンテージ・ワインかシングル・モルト・ウィスキーのような芳醇なまろやかさを携えてたたずむ名作。
録音: Clinton Studio, N.Y.,June 29&30, 1986(オリジナル発売:1986年)
<パーソネル> ミシェール・カミロ(p)/アンソニー・ジャクソン(b)/デイヴ・ウェックル(ds)2, 4, 5 /ジョエル・ローゼンブラフ(ds)1, 3
再生はこちら:lnk.to/bJ6heID4
フレンチ・トースト「フレンチ・トースト」
ミシェール・カミロ、デイヴ・ウェックルが参加した幻のグループ唯一の作品。
翌年、ミシェールの初ソロ作品で再演される“Why not?”の初演バージョンで幕を開ける。こちらのバージョンの方がどこかユーモアのあるアレンジ~アンサンブルとなっている。その後のソロでも共演しエッセンシャルな関係となる、アンソニー・ジャクソン(b)、デイヴ・ウェックル(ds)とのファースト・セッションをお互いが手探りで模索しているようなアプローチに清々しさを感じさせてくれる。
そして、2曲では天下の大御所ドラマー、スティーヴ・ガッド(ds)も客演し花を添えている。
天才ピアニスト、ミシェール・カミロの1984年発表デビュー作品である。
録音: 1984年4月7日、8日、9日スカイライン・スタジオ N.Y.C(オリジナル発売:1984年)
<パーソネル> ピーター・ゴードン(frh)/ルー・ソロフ(tp)/ジェリー・ダジオン(as)/ミシェール・カミロ(p)/ アンソニー・ジャクソン(b)/デイヴ・ウェックル(ds)/サミー・フィガロア(perc)/ゴードン・ゴットリーブ(perc)
[ゲスト] スティーヴ・ガッド(ds)M-3, 4
再生はこちら:lnk.to/6VoLH4K3
向谷 実「ミノル・ランド」
本作は、カシオペアのキーボード・プレイヤー、後に音楽に限らず趣味の鉄道の世界への深い造詣などマルチな活動を展開する、向谷実の数少ないソロ作品のファースト・アルバムであり、キーボードの可能性を広げた向谷氏単独による多重レコーディング作品である。シンセサイザー、サンプラーやシーケンサーを多用した楽曲で構成されている。後に世界的シンセサイザー・ブームの火付け役となった、発売間もないその名器を中心に、独自の世界観を表現している。
時代に先駆けたレコーディング・スタイル、現代でこそ1人多重録音はプロ、アマチュア問わず用いられている録音手法であるが、’85年当時に着手、当時まだ一般的ではない中で実現したことのクリエイティヴィティに敬意を表したい。
録音でもメインで使用されている、世界に誇る歴史的名器(シンセサイザー)、「YAMAHA DX-7」の開発段階から外部アドバイザーとして関わられていたということである。
コンピューター・ゲーム・ミュージックのような淡々としたシュールな音像が創造されており、非日常感にあふれた空想の世界に迷い込んだようななんとも言えないストーリー性を感じる。そんな中、収録曲”ファミリーランド”のハートウォームなフィーチャリングもたまらない温もりを感じてしまう。
録音:Jive Studio 1985(オリジナル発売:1985年)
向谷 実 (YAMAHA KX-88,DX-7,TX-816×2,RX-11,QX-1,GRAND PIANO /ROLAND TR-707,SBX-80 /KORG SUPER PERCUSSION /EMULATOR Ⅱ)
再生はこちら:lnk.to/ElrHGXBT
■ELECTRIC BIRD PLAYLIST BY KING RECORDS